学校における貧困の表れとその不可視化 : 生活保護世帯出身生徒の学校生活を事例に
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概要
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本稿では,エスノグラフィーという手法を用いて,学校生活の中で貧困層の子どもに特徴的に表れる課題を明らかにし,それらの課題が学校や教師から貧困層の問題として捉えられにくい背景にある学校文化のあり様について検討した。対象となった生活保護世帯出身生徒の約半数が「脱落型」の不登校を経験し,不登校経験や学習資源の不足等が直接的に影響して低学力に陥っており,将来の夢や進路に対する「天井感」が見られた。このような目立った課題を有する彼らであっても,生徒を家庭背景や成育歴によって「特別扱いしない」日本の学校文化の中にあっては,学校や教師から「貧困層」の子どもたちとして,特別に処遇されることはない。しかし,彼らの不利が他の一般生徒との違いとなって学校で表れた場合には,学校や教師から特別な配慮や支援がなされることになる。ただ,この場合の支援のあり方は,貧困による不利を解消しようとする積極的な働きかけというよりはむしろ,集団の中で顕在化してしまっている不利を隠そうとする消極的なものとなる。本来であれば,子どもの状況を一番把握しやすい,そして,貧困層の子どもが常に一定数存在し続けていたはずの学校現場で,貧困の問題がこれまでほとんど立ち現れてこなかった背景には,こうした「特別扱いしない」学校文化と,差異を見えなくするための「特別扱い」の影響があったと考えられる。
- 2011-06-10
著者
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