幼児教育の変化と幼児教育の社会学(<特集>幼児教育の社会学)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
現代の日本では,都市化や核家族化,また少子化の進行と家庭の教育力の低下を関連づけ,そのことを解決すべく政策や法制上で「幼児教育」を重要視する傾向にあり,また社会的にも子どもを早くから意識的な教育の対象としてとらえる動きが強まっている。政策・法制上での「幼児教育」重視傾向を教育社会学として分析する際の視点の一つとして,これらの背後にあり1990年代以降しばしば言及されるようになった「家庭の教育力=低下」という認識に関する検討があげられる。これらの認識が十分なデータや客観的な分析に基づいていないこと,そしてこの認識が果たして正しいのかどうかを疑問視し,歴史的に検討する研究が出されている一方で,教育と階層の関連や学力の格差の拡大に関する最近の研究では,家庭教育や家庭の文化的要因の重要性を指摘する知見が多く示されている。日本の「幼児教育」の実態の変化としては,公的な幼児教育制度である幼稚園のとくに年少児の在籍率の拡大,幼児教育産業を利用する家庭の拡大とその格差,小学校受験に向かう家庭の分析等が研究課題として注目される。これらの現場の変化はいずれも,もともと私事性が強くまた市場化が進行しやすい「幼児教育」の特徴が現実に顕在化している状況と考えられ,ペアレントクラシーの進行や「教育家族」の分化のメカニズムの究明につながる重要な研究課題と考えられる。
- 2011-06-10
著者
関連論文
- 1.大学が学生にどのような影響を与えるか : 工業系短大学生の入学から卒業までのパネルデータ分析(IV-4部会 大学と教育効果,研究発表IV,日本教育社会学会第58回大会)
- 153 女子高校生の進路と将来設計に関する研究(I) : 専門学校と短大の比較を中心に(I-5部会 高校生の進路)
- 学校体験と定年後の生きがい(その2)(I-4部会 学歴と社会)
- 学校体験と定年後の生きがい(その1) : 大企業ホワイトカラーの場合(一般研究 I・6部会 生涯教育)
- 幼稚園教師に求められる資質能力 : 幼稚園予備調査の結果分析
- 島田博司[著], 『大学授業の生態誌-「要領よく」生きようとする学生-』, 四六判, 256 頁, 本体 2, 400 円, 玉川大学出版部, 2001 年 6 月刊
- 1.大学におけるジェネリックスキルの獲得(III-4部会 大学と職業,研究発表III,日本教育社会学会第58回大会)
- 幼児教育の変化と幼児教育の社会学(幼児教育の社会学)
- 教育総合研究叢書創刊号に寄せて
- 現代家族と子育て支援