アメリカ通学制聾学校における聾者の社会的統合 : その歴史研究の動向と課題
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概要
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本稿では、19世紀第四四半期アメリカに創設、以後普及した通学制聾学校で重要な理念とされた聾者の社会的統合について、職業社会への統合、一般社会への統合、聾者社会への不統合に着目し、研究動向と課題を検討した。職業社会への統合については、通学制聾学校が目指した寄宿制聾唖学校からの脱却や公立学校教育の志向との関連が十分に解明されておらず、都市産業社会における広義の就労能力の習得についても検討されていない。一方、一般聴者社会への統合は、最も熱心に検討されてきたが、実際の教育的統合や将来の社会適応については限定的であったとの見方が優勢である。通学制聾学校では聾者同士の集合は当然企図されなかったが、実際は口話法推進の学校であっても、卒業後に聾唖者と交際したり、「口話を話す聾者」の集団形成を欲求する可能性が示唆された。今後は、一次資料を用いた複数都市の比較検討、聾者新聞等の活用など、史資料の制約を克服する研究が望まれる。
- 2010-05-31
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