鋳造ポストの除去方法に関する基礎的検討 : 従来型ポストコアリムーバーと改良型ポストコアリムーバーの比較
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概要
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歯科医療において,鋳造ポストの除去処置は困難であり,除去後に歯根破折などのトラブルが起こるケースが少なくない.このことから,患者に快適で安全・安心な歯科医療を提供するためには,鋳造ポスト除去の時間短縮(Speedy),除去の確実性(Sure),患者への最小限の侵襲および安全性(Safe)を考慮する必要があると考えられる(3S).そこで本研究では,より容易に3Sをクリアできる鋳造ポストの除去方法について,抜去歯からのメタルコア(鋳造ポスト)の除去を行い,従来型のポストコアリムーバー(PR)とその改良型を用いて臨床的有用性の比較検討を行った.鋳造ポストの装着されているヒト抜去歯32本を2つの群に分け,鋳造ポストを従来型PRで除去した群をR群,改良型PRで除去した群をRS群と定義した.R群およびRS群両群とも,FGジェットカーバイドバー#1970を用いて,唇(頬)側面と舌(口蓋)側面のコアの金属マージン部にポストに達する深さまで切れ込みを入れた.さらに二種類のPRの先端の嘴部を,おのおのこの二カ所の切れ込みに適合させ,ポストの方向(歯の中心方向)へ少しずつPRの把握力を加えながら,鋳造ポストを脱離させ除去した.その際に,鋳造ポストの除去に要した時間とポスト部の長さの測定,さらに歯根破折の有無(色素浸入試験)について比較検討を行った.ヒト抜去歯の鋳造ポストの除去は,上記のいずれかの方法を用いてもすべて5分以内に除去できた[R群:16/16,RS群:16/16(単位:本)].PRの種類別の鋳造ポストの除去時間の平均は,R群120±70秒,RS群103±76秒であり,RS群はR群に比較して除去時間の平均がやや短い傾向にあったものの,両群間で有意差はなかった(Mann-Whitney U test,p≧0.05).除去した鋳造ポストの長さの平均は,R群6.1±1.5mm,RS群6.1±1.4mmであり,両群間で有意差はなかった(Mann-Whitney U test,p≧0.05).また,最小の太さのFGジェットカーバイドバー#1970を用いたことによって,鋳造ポスト除去時の歯質の削除による侵襲を可及的に小さくできていた.さらに,鋳造ポストの除去に二種類のPRを用いたことによる除去歯の歯根破折は,色素浸入試験を用いてもほとんど観察されなかった.以上のことから,二種類のPRはともに迅速・確実・安全(3S)に鋳造ポストを除去できる可能性が示唆された.なお,改良型PRのほうが従来型PRに比較して,除去時間が短い傾向にあることが経験された.
- 2011-02-28
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