鋳造修復物の除去方法に関する臨床的検討 : 鋳造修復物除去の時間短縮,除去の確実性,患者への最小限の侵襲および安全性を求めて
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概要
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歯科医師は,歯冠修復物を除去する際には,その歯の保存治療による延命化を目標において行う.しかし鋳造修復物の除去は難しく,除去後に歯牙(歯根)破折などのトラブルが起こるケースが少なくない.このことから患者に快適で安全・安心な歯科医療を提供するためには,修復物除去の時間短縮(Speedy),除去の確実性(Sure),患者への最小限の侵襲および安全性(Safe)を考慮する必要があると考えられる(3S).そこで本研究では,3Sをクリアできる鋳造修復物の除去方法について臨床的な検討を行った.平成21年5月21日から7月31日までの間に王喜歯科医院に来院した患者のうち,下記の条件で鋳造修復物を除去した歯を対象とし,除去に要した時間,歯牙(歯根)破折や自発痛・打診痛の発現などについて評価した.1.メタルクラウンの除去:FGカーバイドバー#1/2を用いて,歯冠の唇(頬)側面と咬合面の中央部を近遠心へ二分するように最小限の深さでクラウンの金属部のみに切れ込みを入れ,マイナス型ドライバーの先端を適合させて少しずつ捻転し,インレー・クラウンリムーバーを用いて脱離させ除去した.2.メタルインレー・アンレーの除去:FGカーバイドバー#1/2を用いて,歯冠の金属マージン部全周に最小限の深さで切れ込みを入れ,エキスカベーターの先端を適合させて少しずつ捻転しながら脱離させ除去した.3.メタルコア(鋳造ポスト)の除去:FGカーバイドバー#1970を用いて,唇(頬)側面と舌(口蓋)側面のコアの金属マージン部にポストにまで達する深さで切れ込みを入れた.さらにポストコアリムーバーの先端の嘴部をこの二ヵ所の切れ込みに適合させ,金属ポストの方向(歯の中心方向)へ少しずつリムーバーの把握力を加えながら,鋳造ポストを脱離させ除去した.来院患者の鋳造修復物の除去は,上記のいずれかの方法を用いてもほとんどの場合5分以内に除去できた[メタルクラウン:25/26,メタルインレー・アンレー:18/18,鋳造ポスト:18/18(単位:本)].鋳造修復物の種類別の除去時間を比較したところ,メタルクラウン133±82秒,メタルインレー・アンレー78±62秒,鋳造ポスト103±77秒で,メタルインレー・アンレーの除去はメタルクラウンの除去に比較して除去時間が有意に短かった(Mann-Whitney U test,p<0.05).また鋳造ポストの部位別の除去時間を比較したところ,前歯部88±64秒,小臼歯部93±78秒,大臼歯部133±91秒で統計学的有意差はなかった(Mann-Whitney U test,p≧0.05).なお,先端の径の小さいFGカーバイドバー#1/2および#1970を用いることにより,鋳造修復物除去時の歯質の削除による侵襲を可及的に小さくできていた.さらに鋳造ポストの除去にポストコアリムーバーを用いたが,除去後に歯牙(歯根)破折や自発痛・打診痛の発現,歯周ポケットの形成,歯の動揺はほとんど生じていなかった.とりわけ,除去処置前と除去処置から1カ月以上経過後の,鋳造ポスト除去歯の状態を比較すると,除去歯の打診痛および歯周ポケット(プロービング深さ),歯の動揺の状態が有意に改善されていた(Wilcoxon signed rank test,p<0.05).以上のことから,鋳造修復物を除去するほとんどのケースで上記の方法をおのおの適用することにより,迅速・確実・安全(3S)に各種鋳造修復物を除去できる可能性が示唆された.
- 2009-12-31
著者
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