Helicobacter pylori慢性胃炎における血清学的診断の臨床的意義-内視鏡検査所見との比較検討-
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概要
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胃癌の発見をより効率的に行うために、Helicobacter pylori(H.pylori)感染の有無、および感染者では胃癌発生のリスクとされる胃粘膜萎縮の程度を調べることが重要である。血清H.pylori抗体価と血清ペプシノゲン(PG)値による血清学的診断の有用性について検討した。2007年6月から2009年2月に東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート(IREIIMS)の実証実験に参加した健常ボランティア111例(男性38例、女性73例、平均年齢57.2歳)を対象とした。H.pylori抗体価とPG値を測定し、三木らの分類に基づき、A群からD群の4群に分類し、H.pylori抗体価とPG法ともに陰性(正常)であったA群47例を安全群、いずれかが陽性(異常)であったB、C、D群64例を危険群として、血清学的診断と内視鏡所見(胃粘膜萎縮の程度と胃十二指腸病変)を比較した。胃粘膜萎縮を認めなかった症例はA群78.7%、B群13.1%、C群0%、D群40%であり、一方、中等度以上の萎縮を認めた症例はA群12.6%、B群55.2%、C群85.7%、D群60.0%であった。血清学的診断による安全群と危険群における内視鏡的な胃粘膜萎縮の診断予測は感度78.7%、特異度89.1%、陽性適中率84.1%、陰性適中率85.1%であった。胃十二指腸潰瘍は安全群では認めず、危険群で11例(17.2%)に認めた。A群における胃粘膜萎縮例10例と非萎縮例37例の血清学的診断の差異を検討したところ、胃粘膜萎縮例は高齢で、H.pylori抗体価が陰性の中でも比較的高い傾向であったが、PG値は両群間に有意差を認めなかった。H.pylori抗体価、PG値による血清学的診断は、内視鏡検査による胃粘膜の性状を予測するのに有用である。胃癌のハイリスク群、ローリスク群を判別でき、効率的な胃癌検診に貢献するものと考える。
- 2011-08-25
著者
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小西 洋之
東京女子医科大学消化器内科
-
小西 洋之
東京女子医科大学附属消化器病センター 消化器内科
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小西 洋之
八王子消化器病院
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岸野 真衣子
東京女子医科大学 消化器病センター
-
中村 真一
東京女子医科大学消化器内科
-
中村 真一
東京女子医科大学
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岸野 真衣子
東京女子医科大学消化器内科
-
春山 浩美/中村
東京女子医科大学消化器内科学
-
春山 浩美/中村
東京女子医科大学医学部消化器内科学/東京女子医科大学医学部消化器内科学/東京女子医科大学医学部消化器内科学/東京女子医科大学医学部消化器内科学/東京女子医科大学医学部消化器内科学
-
春山 浩美
東京女子医科大学医学部消化器内科学
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白鳥(立元) 敬子
東京女子医科大学医学部消化器内科学
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小西 洋之
東京女子医科大学医学部消化器内科学
-
小西 洋之
東京女子医科大学消化器内科学
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