マクロ分析なき林業経済学からの脱却に向けて : 木材貿易と森林資源,日本経済の中での林業への資源配分(テーマ:林業経済研究は森林セクターにどう貢献するか-気鋭の研究者はこう考える-,2011年春季大会論文)
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概要
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木材貿易の問題についてのマクロ的な理論分析は林産物の多くを海外に依存している日本の森林・林業政策を考える上で不可欠である。本稿では,まず木材貿易が貿易当事国国内の森林の持続可能性に与える影響について筆者が行ってきた理論的分析をデータと重ね合わせてみることにより,世界の森林資源と木材貿易の関係についての大まかなイメージをつかむ。次に貿易による資源配分や所得分配の変化についてストルパー=サミュエルソンの定理を用いて理論的に解説し,各種データによって日本における輸入代替産業である林業を含む農林水産部門と輸出産業である工業部門の明治期以降の変化を説明する。日本経済は諸外国に比べて貿易への依存度が低く,また着実な経済成長によって,2000年前後までは賃金水準も上昇しつづけたため,第一次産業への負の分配効果は規模的縮小に留まった。しかし近年雇用吸収力は限界に達しており,ストルパー=サミュエルソン定理による説明どおり,貿易自由化,資本移動による分配変化が起こっていることがわかる。そして現在の日本の産業構造の中で,林業を含む第一次産業をどう考えるべきなのか,についての示唆を与える。
- 2011-03-01
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