パイに関する研究(第2報) : 小麦粉中のグルテンの量による成品への影響
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概要
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パイの薄層形成ともろさは油脂量と油脂のタイプによって影響されるとともに,パイの骨格をなす小麦粉のグルテンの活力にもよる。小麦粉として薄力粉,中力粉,強力粉および強力粉:薄力粉の混合粉として1:9〜9:1までの9段階の配量でバターとコーンマーガリンを小麦粉の80%添加してパイを作り,更に小麦デンプンに活性グルテンを5,8,10,11,12,13,14,15%の8段階の配量をもって実験を行ない次の結果を得た。1.油脂としてバターを使用した場合。1)薄力粉:グルテン量が少ないためソフトであるが浮き上る力が欠ける傾向があるので三っ折り5回、即ち重ね数を多くすることによりグルテンの弾性によって浮き上り連続した薄層を形成する。2)中力粉:重ね数の多少によらず連続した薄層でソフトである。油脂の伸展性とグルテンの弾性とデンプンの粘性のバランスがとれて安定した層を形成した。3)強力粉:グルテンの熱変性による面積の縮少率が高く硬質となる。グルテンの弾性が強く組織が密になるので重ね数を少なく即ち2,3回にして層間に空気を入れるようにすると浮きがよくなる。4)強力粉:薄力粉の混合粉として薄力粉の多いものはソフトであるが重ねを多くして浮きの弱さを補うようにすると層状はよい。薄力粉と強力粉の割合が近いものは重ねの多少によらず平均した層形成を示した。強力粉の多いものは層が厚く硬質となる。重ね数を2,3回にしてグルテンの弾性を抑えると層形成がよい。混合粉の強力粉:薄力粉が5:5のものが薄層形成ともろさに於いて良好であった。5)活性グルテンの添加では5%ではクッキー様の層で浮き上らないが,8%から不連続であるが浮きを示す。13%が連続した薄層を呈し,これ以上は層が厚く硬質となる。2.油脂としてコーンマーガリンを使用した場合。1)薄力粉:バターと同様にソフトであるが,重ねの少ない2回は逆に多い6回が浮きが悪い。重ね4回が連続した薄層を呈する。2)中力粉:重ねの多少によらず連続した薄層を形成し層状は良好である。3)強力粉:バター使用のものより縮小しないが薄力粉,中力粉に比べて縮少率が高く硬質となる。重ね数を少なくしてグルテンの弾性を抑えると浮きを呈する。4)強力粉:薄力粉の混合粉は薄力粉の混合が多いものはソフトであるが強力粉の量が増すと硬質になるのはバターと同様である。膨化,層状からは薄力粉,中力粉強力粉の各々単独の場合より不連続な層を形成し好ましくない。5)活性グルテンの添加では5,8%は層が浮き上らずクッキー様であり,10%から不連続な層ではあるがパイらしくなり,11%が連続した薄層となりソフトであるがこれ以上の添加は硬質で層が厚い。これまで菓子用としては薄力粉が多く利用され中力粉の使用は少なかった。練りパイ法によるパイクラストは市販の中力粉を用いれば薄層で浮きがよいソフトなパイを作ることが出来る。(本研究の一部は第19回日本家政学会東北,北海道支部総会[昭和49年7月24日]において報告した。)
著者
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