金融自由化・少子高齢化社会における金融リテラシー教育 : イギリスの事例を中心に
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概要
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2000年金融サービス・市場法は、金融機関を規制・監督し、金融消費者の権利を保護するイギリスにおける唯一の金融当局として金融サービス機構(FSA)を設立した。FSAの目的は、効率的、順法的かつ公正な金融市場を整備し、消費者が公正な金融取引ができるように手助けすることを目的としている。金融取引や金融に関わる問題をめぐる消費者の決定は種々な要因によって影響を受ける。たとえば、ライフサイクルの段階、可処分所得、みずからが直面する問題を識別する能力、多様な意見が存在することを認識する能力や多様な意見を評価する能力、有益な情報や助言を入手する手立てなどである。消費者のニーズに適合した、実効性のある消費者教育プログラムを確実に実施するために、FSAはその役割を達成するための3つの方策を策定した。1)金融リテラシー(能力)教育として、消費者にスキルと知識を伝授する。この金融リテラシー教育は小学校や中学校、高校、大学などの教育機関、あるいは社会人のために職場やインターネットを通じるなど、その他の方法で提供される。金融リテラシー教育はあらゆる金融サービス能力向上のための活動を補強する。2)消費者への助言サービスは事前に準備された指針に沿って提供され、双方向的であり、かつ個々の消費者の特性やニーズにぴったり適合した「テイラー・メイド」の助言が提供される。消費者情報としては個々の消費者に対して、金融サービスに関する事実、データおよび意見が多様なチャネルを通じて提供される。金融リテラシー教育は政府の資金、(スポンサーとして、また雇用者として両方の立場からの)企業の貢献、慈善団体の支援金、および金融サービス機構からの資金によって賄われている。但し、金融サービス機構自体の運営資金は、規制・監督の対象である金融機関に対して課徴される賦課によって賄われている。わが国においても、2007年9月にやっとのこと、金融商品取引法が完全実施された。金融商品や金融サービスの消費者、なかんずく高齢の年金生活者からの苦情や被害、金銭的な損害の件数がここ数年、急増しているという状況を鑑みれば、学校・大学など教育機関のみならず、職場やインターネットなど多様なチャネルを駆使して金融リテラシー教育をすべての国民をカバーするような包括的な施策の完全実施が焦眉の急の問題である。わが国政府(中央政府および地方公共団体)はこのような緊急課題に可及的速やかに実施を実行するべきであろう。
- 2008-10-30
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