49 鉄筋コンクリート建物の温度応力立体解析-V : 実在の3層建物について(雪・地盤・立体解析,建築構造)
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概要
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我が国における平面ラーメンの温度応力解析法に関する研究は、高橋正元氏、高橋武雄博士、青山博之博士、及び小幡によって行なわれた。これらの研究によって平面ラーメンの温度応力に関する諸性状が明らかにされると共に略算法が導かれ、また節点の鉛直方向変位や基礎部の水平移動を考慮した場合の解析を行ない、温度伸縮及び応力に対する影響が検討された。ただし当時は有効な解析手法がなかったため、はりの曲げ及び軸方向剛性に及ぼす有効幅内のスラブは考慮したが、ラーメンの温度応力に対する壁・スラブの影響は無視していた。一方、実在の鉄筋コンクリート造建物の温度伸縮の計測は、武藤清、大野和男両博士によって行なわれた。温度伸縮を計測した建物は、北海道恵庭町島松の陸上自衛隊北海道補給処の隊舎(3階建)と需品庫(1階建)であって、平面と断面の大要を、文献から再録すると図-1の通りである。隊舎は木造屋根で覆われ、冬期間は暖房されている。図示の通りエキスパンションジョイントで分けられているが、基礎ばりは連続している。これに対し需品庫は、傾斜地に建てられた1層建物で、一部の管理部門を除き冬期間の暖房はない。また桁行方向中通りのラーメンには基礎ばりはなく、全体を3分するエキスパンションジョイントはスパン中央部に設けられていて、側ラーメンの基礎ばりを含め、建物は完全にエキスパンションジョイント部で分断されている。温度伸縮の計測はエキスパンションジョイント幅の変化を連続的に記録することによって行なっているが、これによると年間伸縮量と同一期間内氣温差について求めた自由温度伸縮値との比は表-1のようであった。これらの建物を上記の平面ラーメンの温度応力計算法で解析した結果によると、2階床外端部の伸縮値と自由温度伸縮値との比は、最も小さくなる条件のもとでも0.95程度であって、表-1の値と著しく違った。このような差異を生じる原因として、a)建物を伸縮させる温度(以下有効温度と呼ぶ)が外気温または室温とは異なり、有効温度の変動幅が外気温等の変動幅よりも小さいのではないか、b)建物内に生じたひびわれが伸縮に影響するのではないか、c)建物内の壁が伸縮に影響するのではないか、等が挙げられた。阿部宏侑氏によれば、50×50cmの無筋コンクリート部材の断面内平均温度の日間変動幅は、外気温のそれよりも小さいが、大きな差異はない。これより外気温にのみ基因する部材有効温度の変動は、外気温と余り違わないと思われる。これに対し暖房されている建物の有効温度は、当然外気温とは異なることが予想される。更に各階床スラブと外壁とでは暖房の影響のうけ方が違い、建物全体としての有効温度のとり方が難しくなる。またb)のひびわれの影響については、なんらかの影響が考えられるが明らかでない。一方c)については、小幡による準備計算において、その影響が極めて大きく、スラブを介して壁のない構面の温度応力及び伸縮にまで影響が及ぶことが明らかになった。そして喜多村が図-1(b)の需品庫の□内建物をモデル化し、部材の温度変化を一様と仮定して弾性立体解析した結果は、建物残對についての平気開口周比が同じ場合のR階スラブ外端の伸縮値は、自由温度伸縮値の0.54となって表-1の値に近似した。以上より鉄筋コンクリート建物の温度伸縮及び応力は、スラブ・壁を考慮した立体解析によらなければならないと判断された。本報告は、上記の需品庫の解析にならって壁・スラブを考慮しながら弾性的に立体解析し、大野博士の計測値と比較し考察したものである。
- 社団法人日本建築学会の論文
- 1984-03-26
著者
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