マングローブ林に対する人間活動の長期的影響とその地球温暖化問題における意味づけ(シンポジウム:世界の沿岸海域における環境と生態系の長期変動)
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概要
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今日まで熱帯林は地球温暖化問題における二酸化炭素の吸収源となっているとされてきた.しかし,炭素の吸収源であることを明らかにするためには解かねばならない問題が残されている.確かに熱帯林の幹や根等の現存量として炭素を吸収しているといえる.しかし,熱帯林の林床部はまた二酸化炭素以外の亜酸化窒素やメタンなどの温暖化ガスを放出している可能性がある.本研究においては,熱帯林の中でもマングローブ林の炭素吸収源としての機能の評価を試みた.2002年8月ベトナム国のマングローブ林において,森林の林床部と周辺の森林のない干潟部の亜酸化窒素放出量に統計的な差を見出すことができた.しかし,3月においては統計的な違いを見出すことができなかった.また,8月に見出された違いも大きいものではなかった.加えて,これまでに報告された温暖化ガスの放出量および森林現存量のデータの検討から,マングローブ林は炭素吸収源となると判断された.しかし,最近の報告から熱帯林の多くを構成する陸域の熱帯降雨林は,その現存量に対し比較的高い林床部からの亜酸化窒素ガスの放出量を示し,正味の炭素吸収源となっているとはいえないと推定された.
- 日本海洋学会の論文
- 2005-08-26
著者
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大西 秀次郎
愛媛大学沿岸環境科学研究センター
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大森 浩二
愛媛大学沿岸環境科学研究センター(cmes)
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奥田 昇
京都大学生態学研究センター
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大森 浩二
愛媛大沿岸環科セ
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堂浦 旭
愛媛大学沿岸環境科学研究センター
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福元 亨
愛媛大学沿岸環境科学研究センター
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松本 潤二
愛媛大学沿岸環境科学研究センター
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奥田 昇
愛媛大学沿岸環境科学研究センター
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奥田 昇
京都大学・生態学研究センター
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大森 浩二
愛媛大学沿岸環境科学研究センター
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