汽水域での高次生産者を通じた窒素・リンの収支(シンポジウム:閉鎖性汽水域における物理・化学・生物学的過程)
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概要
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閉鎖性汽水域である宍道湖と中海において,高次生産者を通じた窒素・リンの収支を検討した.宍道湖において漁獲対象種である二枚貝ヤマトシジミを通じた窒素循環を定量化したところ,夏季には湖全体の純生産量の約半分を取り込み,ヤマトシジミの成長量は河川からの流入負荷量の15%に相当した.中海では漁獲対象とならない二枚貝ホトトギスガイが高密度に生息するが,中海で越冬するハジロガモ類は,このホトトギスガイを主な餌としていた.ホトトギスガイの寿命は約1年で,夏季に大量死することがある.もし冬季に水鳥がホトトギスガイを食べなければ,夏季に大量死したホトトギスガイから窒素が55t,リンが4.2t放出されると見積もられた.さらに死んだ貝が分解されるときに大量の酸素が湖底で消費されて貧酸素化を加速すると考えられた.閉鎖性汽水域における魚類を通じた物質循環の定量化には課題は多いが,少数の汽水種が現存量の大半を占めていたことから,将来的には定量化が可能になると期待された.
- 日本海洋学会の論文
- 1997-08-29
著者
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