沿岸フロントと動物プランクトン(シンポジウム:沿岸フロントと生物生産)
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概要
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微弱な遊泳能力しか持たない動物プランクトンは,基本的には海水の流れに受動的である.そのうち浮上性の強いヤコウチュウ,枝角類,ポンテラ科カイアシ類,尾虫類,クラゲ類,魚類稚仔などの主として肉食性を示す仲間は海面収束の場であるフロントに物理的に集積される.一方,フロントは植物プランクトンの現存量,生産速度が共に高い海域としてよく知られている.豊後水道北部に形成される潮汐フロント域でも植物プランクトンの現存量は高く,浮上性の強い動物プランクトンの出現密度は高く,植食性カイアシ類Paracalanus sp.の1個体当たりの産卵速度は高かった.しかし,フロント域での本種の卵,ノープリウスの死亡率は異常に高く,その結果本種成体雌の密度は隣接海域より低かった.フロント域に出現する動物プランクトンの群集構造は動的であることから,時には物理的集積によりフロントに集中して分布する肉食者がそこでの生物生産構造に重大なインパクトを与えることが推定される.
- 日本海洋学会の論文
- 1995-08-31
著者
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