駿河湾におけるメガベントス相の深度分布とその非調和性(シンポジウム:急傾斜海岸の海洋環境と開発)
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概要
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陸岸に急迫した深海系のベントス相の生態学的特徴を明らかにするため,駿河湾のメガベントス相を深海用水中ステレオカメラの画像情報と,トロール等によって採集した試料の測定結果とを組み合わせて解析した.メガベントスの種数と,種組成の類似度を統計的に検討した結果,5区,4亜区の生物深度分帯が明確に認められた.また,現存量は水深にかかわらずほぼ一定であるという傾向がみられた.離岸距離の影響が小さく,現存量を支える栄養条件の差は小さいが,水深方向の環境勾配が大きいので,生物組成が明確に入れ替わるものとみなされる.さらに,急勾配の海底地形は,中層性生物と底層性生物の接点となり,生物によるダイナミックな物質鉛直輸送を研究する格好のフィールドとなっている.湾奥やトラフ主軸のメガベントス相の特徴として,移動能力の低い生物が少なく,固着性のベントスが欠如し,遊泳能力の高いベントスが多い.また,マクロベントスの種多様性は低い.トラフ軸は強い底層流や混濁流の流軸となるため,移動性の低いベントスは死滅し,遊泳性が高く埋積から逃れることのできる種や,栄養が豊富で空になったニッチェにすばやく入り込むことのできる種が優占する非調和な生物相となっている.
- 日本海洋学会の論文
- 1988-08-31
著者
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