イスタンブル、耐震都市再開発プロジェクトの時間性 : 都市変容の人類学に向けて(<特集>都市に(が)居座ること)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文は、トルコ共和国イスタンブル市にここ10年にわたって「居座って」いる、一連の耐震都市再開発プロジェクトの進行と停滞の独自のテンポを、それを構成する諸要素についての記述から明らかにするものである。本論文の目的は、この事例の検討を通じて、様々な人、組織、事物、概念などの諸要素の絡み合いとしての都市変容のプロセスを描く人類学的研究のあり方を考察することにある。事例となる耐震都市再開発プロジェクトは1999年にイスタンブルの隣県で起きた大地震を契機にあらわれたもので、この都市が繰り返し襲われてきた地震という問題に対するひとつの新しい対策である。だがここで注目したいのは、このプロジェクトが予定通り実現されることなく、ある時点では急速に進行し、ある時点では停滞しながら、いまだ着工されるに至っていないという点である。本論文ではこの進行と停滞、そして再開という紆余曲折をこのプロジェクトの独自のリズムと捉え、それを3つのフェーズにおいて、その時点での動きを構成する諸要素を記述する。それによって、プロジェクトの「居座り」が、都市計画の実践が伴うツールや、都市としてのイスタンブルを取り巻く状況、さらには現地に住む人々や計画に関わる諸組織の思惑、突然起きる出来事などとの関わりのなかで生じていることを明らかにする。そしてこうした多数の雑多な要素の絡み合いを通じてこそ、都市というものを垣間見ることができるのではないか、と主張する。
- 2010-09-30
著者
関連論文
- スザンナ・M・ホフマン、アンソニー・オリヴァー=スミス編/若林佳史訳, 『災害の人類学:カタストロフィと文化』, 東京, 明石書店, 2006年, 327頁, 3,600円(+税)
- 地震学・実践・ネットワーク : トルコにおける地震観測の人類学的観察(科学技術の人類学)
- 暗い未来に抗して : トルコ・イスタンブルにおける地震とコミュニティ
- 回帰する「8月17日」--トルコにおける地震の集合的記憶をめぐって
- 災害の人類学的研究に向けて
- イスタンブル、耐震都市再開発プロジェクトの時間性--都市変容の人類学に向けて (特集 都市に(が)居座ること)
- イスタンブル、耐震都市再開発プロジェクトの時間性 : 都市変容の人類学に向けて(都市に(が)居座ること)
- 序 都市に(が)居座ること : 都市の人類学に向けて(都市に(が)居座ること)
- 東日本大震災によせて(資料と通信)
- 3-7 トルコ・エルジンジャン市における震災復興の経験