暗い未来に抗して : トルコ・イスタンブルにおける地震とコミュニティ
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概要
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災害の人類学は従来、洪水などの周期的な災害に対する、その地域の災害観や伝統的な対応(「災害文化」)、地震や産業災害など突発的に起きる災害の復興過程のエスノグラフィ、あるいは災害の被害拡大の社会的(歴史的・文化的)要因に着目しながらの持続的開発にかかわる応用実践などを中心的に扱ってきた。中でもこの「災害の社会的要因」の研究は、1990年代の「国際防災の10年(IDNDR)」以降、広い分野で注目を集め、「社会的要因」は「コミュニティ(あるいはそのサブカテゴリー)の脆弱性(vulnerability)」という概念として定式化され広く普及しているが、その枠組みには検討すべき点も残る。本論文は筆者が2004-5年に行った調査に基づき、過去の災害と将来の災害の間にあるイスタンプルのあるコミュニティを事例に議論を進める。地震学の蓄積はイスタンプルで近い将来大きな地震が起きる可能性がきわめて高いことを明らかにしているが、本論文ではそのコミュニティにおいて、災害という問題がどのように認識され、またそこで暮らす人々がどのような対応を取り、それがどのように状況を変化させているのか(あるいはさせていないのか)を分析する。
- 日本文化人類学会の論文
- 2006-12-31
著者
関連論文
- スザンナ・M・ホフマン、アンソニー・オリヴァー=スミス編/若林佳史訳, 『災害の人類学:カタストロフィと文化』, 東京, 明石書店, 2006年, 327頁, 3,600円(+税)
- 地震学・実践・ネットワーク : トルコにおける地震観測の人類学的観察(科学技術の人類学)
- 暗い未来に抗して : トルコ・イスタンブルにおける地震とコミュニティ
- 回帰する「8月17日」--トルコにおける地震の集合的記憶をめぐって
- 災害の人類学的研究に向けて
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- 序 都市に(が)居座ること : 都市の人類学に向けて(都市に(が)居座ること)
- 東日本大震災によせて(資料と通信)