日本産Retinia属と1新種の記載(鱗翅目:ハマキガ科)
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概要
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Retinia属は,FERNALD(1908)によって指定された模式種Phalaena Toritrix buoliana [DENIS & SCHIFFERMULLER]がRhyacionia属の模式種と同一であることから,Rhyacionia属の劣級客観同物異名として扱われてきた.しかし,LERAUT(1979)は,DESMAREST(1857)がRetinia属の模式種にRetinia resinana GUENEE(=Phalaena Tinea resinella LINNAEUS)を既に指定していることを指摘し,Petrova属をRetinia属の劣級主観同物異名とした.本論文において,日本からRetinia属の1新種の記載を行うとともに,従来Petrova属として知られていた3種を新たにRetinia属に移した.Retinia属は全北区に分布し,20種以上が記録されている.本属は,1)雄交尾器のvalvaのくびれ部の腹方にくぼみ(ventral concavity)があること,2) valvaのbasal openingの後方端に三角形の硬化した突起(clasper)を持つことにより特徴づけられる.幼虫は,マツ類,モミ類,トウヒ類の新梢や球果に食入する.本属はBlastesthia属に交尾器の構造と斑紋の類似から近縁であると考えられるが,1)雄交尾器のvalvaにventral concavityがある,2)雌交尾器のsignaは2つであることで区別できる.日本産Retinia属の種は以下の4種である.Retinia jezoensis NASU(新種) エゾズアカヒメハマキ(新称) 開張13.5mm.雄の前翅に前縁摺がない.前翅の地色は黒褐色,基部と中央部に幅広い鉛色の帯が横切り,翅頂部と肛角上に不定形の鉛色斑を持つ.分布:日本(北海道).寄主植物:不明.本種は次種R. cristata (WALSINGHAM),マツズアカシンムシと外部表徴では類似するが,1)前翅の地色はより黒いこと,2)翅頂から1/3までの前縁の楔状紋は2つであること,3)肛上紋は不明瞭で不定形の鉛色斑で示されること,4)雄交尾器のsacculusの腹方端は鈍角をなすこと,5)cucullusの腹方端は丸いことで区別できる.Retinia cristata (WALSINGHAM)(新結合)マッズアカシンムシ 分布:日本全土,韓国,中国(華中以北),タイ国.寄主植物:アカマツ,クロマツ,馬尾松(Pinus massoniana LAMB.)の新梢と球果.本種は外部表徴では前種R. jezoensis NASU,エゾズアカヒメハマキに類似する.識別点は前種の項に示した.Retinia coeruleostriana (CARADIA)(新結合)マツアカツヤシンムシ 分布:日本(本州中部以北,北海道を除く),中国北部,ソ連邦(沿海州).寄主植物:アカマツの新梢.本種は外部表徴ではRhyacionia dupulana simulana HEINRICH,マツツマアカシンムシに類似するが,前翅の翅頂部から1/5が黒灰色であることで区別できる.Retinia monopunctata (OKU)(新結合) ツマクロテンヒメハマキ 分布:日本(北海道,本州,四国),中国(華北),ソ連邦(沿海州).寄主植物:トドマツ,ウラジロモミ,ハリモミ,エゾマツの新梢と球果;ドイツトウヒの新梢;チョウセンモミ,ストローブマツ,カラマツ,チョウセンマツの球果.本種と外部表徴で近似する種はなく,識別は容易である.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1991-07-15
著者
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