ツトガ Ancylomia japonica ZELLER の胚子発生 : III.胸部体節形成〜胚子の短縮
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概要
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ツトガの胚子において,胸部体節形成から胚子の短縮までの時期を8のステージに分け,各ステージにおける発生状態を述べた. 1)前大腮付属肢は1対の小さな外胚葉性突起として出現する.しかしながら,これらは後の発生過程で消失する一時的なものである. 2)頭部は6部分,すなわちacron,触角節,前大腮節,大腮節,小腮節そして下唇節からなるものと考えられる. 3)腹部は最初11節より成るが,後に第10節が消失し10節となる. 4)口陥陥入が起る時,内胚葉細胞が口陥末端で特殊な細胞塊として形成される.他方,肛門陥陥入時には,特殊な細胞塊は存在しない.前部中腸上皮は口陥末端で形成された細胞に由来する. 5)epipharynxは口陥開口部の直前で小さな突起として形成される. 6)神経細胞は各節で形成される.後に,顎頭節の神経球が1つに融合する.第10腹節が消失する時,第9腹部神経球と第10腹部神経球が1つに融合する. 7)上唇は最初1対の突起として出現し,後に,これらの対状突起は中央に移動し,融合する.この過程を通じて,上唇原基内の1対の体腔が観察される.しかし,これらの体腔は他の体節の体腔とは異っている. 8)食道下体は口陥陥入部の腹側の中胚葉細胞に由来する.この中胚葉は前大腮節に属する. 9)口胃神経組織は口陥陥入部の背壁から発達する. 10)マルピーギ管は肛門陥末端で1対の外胚葉性陥入として形成される. 11)頭部における外胚葉性陥入は7対,すなわち,膜状骨前腕,extensor mandibulae, flexor mandibulae,だ液腺,膜状骨後腕,絹糸腺そして前胸腺である.膜状骨前腕,extensor mandibulae, flexor mandibulaeそしてだ液腺は大腮節に,膜状骨後腕は小腮節に由来し,絹糸腺と前胸腺は下唇節に属するものと思われる.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1971-12-31
著者
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