外来生物の侵略性に関わる形質の解明に向けて(<特集>生物の空間分布・動態と生態的特性との関係:マクロ生態学からの視点)
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概要
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外来生物のどのような形質が、本来の分布域外での定着、分布拡大の成功と関連しているか、という問いは生物学的侵入の大きな命題である。この命題は40年以上も前から取り組まれているものの、対象とする空間的範囲や種数が限られたものが多かった。近年、デジタル化された大規模なデータセットの整備が進み、広域に生育する多くの種を対象とすることが可能になったことで、注目する形質に対しその影響の一般性の検討が容易になってきた。マクロスケールにおける大規模なデータセットを用いた研究では、問題設定により対象とする空間範囲(外来種の供給元、侵入先)や、比較する生物相(外来種と在来種、外来種同士)、対象とする種数等が異なる。また、近年、統計解析を実施する際、結果の偏りを避けるために、対象とする種の系統関係や、これまでに侵入した散布体や個体の数、個々の種が侵入した時期を考慮することが可能になってきた。さらに、個々の種の侵入先での分布域の広さを侵略性の指標とする研究が増えてきたが、その広さを評価する空間スケールも結果に影響を与えることから、今後、データセットの整備や解析の際に配慮が求められる。今後、注目する生物の分布と形質の情報に加え、生育地の特性、さらには捕食者など生物間相互作用のみられる生物の分布や形質を考慮に入れる解析を行うことで、外来種の侵略性と関係の深い形質に対する理解は深まるだろう。マクロスケールの研究は広域を対象としたデータセットがあって初めて進めることが出来る。データセットを活用した成果が示されることで、その整備の有用性が認められ、さらに新たなデータセットが構築されるという正の循環を生み出すことで、マクロ生態学が発展することを期待する。
- 2010-07-31
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