「聴くことが苦手」な児童の一斉授業における聴くという行為 : 「対話」に関するバフチンの考察を手がかりに
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概要
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本研究の目的は,一斉授業における他者の言葉を聴くという行為の特徴を,「聴くことが苦手」と教師から認識されている児童の発言から明らかにすることである。本研究では話すという行為と聴くという行為の分離を想定しないバフチンの「対話」に関する考察に基づき,発言が1)他者の言葉への返答であること,2)聴くという行為が,先行する他者の言葉と,聴き手の応答の言葉との「内的対話」であること,という視点に立ち,対象となる児童の発言形成過程に着目し,その児童が聴くという行為において抱える問題から,一斉授業における聴くという行為がどのように捉えられるか検討した。その結果対象児が1)発言を教師にのみ「宛て」ている,2)先行する対象における他者の言葉との「内的対話」を行っていない,3)自らの発言に対する聴き手の,応答の言葉を取り込んで(appropriation)いない,4)聴き手によって支えられた話し合いの流れに沿って発言をしていない,という特徴を持つことが明らかになった。ここから,「一対多の対話」が求められる一斉授業での聴くという行為が,先行する他者の発言を自らの発言のうちに取り入れるだけではなく,話し合いの流れを考慮し,教師以外の複数の児童をも聴き手とし,彼らが自らの発言に対してどのような返答を行うかを考慮に入れて,自己の言葉を形成する,という特徴を持つことが明らかになった。
- 2008-03-31
著者
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