慢性腎臓病看護の動向に関する文献的考察
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概要
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慢性腎臓病(Chronic kidney disease、以下CKD とする)は腎臓の機能が障害されることによる病態全てを含む包括的概念である。CKD は近年の透析患者の増加や、死亡の主要因である心血管病(Cardiovascular disease、以下CVD とする)を引き起こす病態として、世界的に対策の重要性が注目されている。日本では2006 年に慢性腎臓病対策協議会:J-CKDI(Japan Association of Chronic Kidney Diseases Initiative) が設立され本格的にCKD 対策が始まった。本報告では2006 年以降の文献をもとにCKD の治療や看護の動向について検討した。CKD の定義やステージ分類は国際基準をもとに設定され、ハイリスク群とステージ1〜5まで、病気の進行状況に合わせたケアが提唱されていた。CKD の考え方の導入に伴う看護の方向性としての特徴は以下の4 点と考えられた。(1)長期的視点の導入:CKD 外来相談窓口の設置など長期的視点に基づく試みが始まっている。様々な専門分野の看護師と連携し情報を共有することも必要である。(2)セルフマネジメント:慢性病看護で用いられる概念を、単独で用いるだけではなく組み合わせて活用されている。一方、ベッドサイド看護の限界からより包括的な新しいモデル開発も必要とされている。また、医療者がセルフマネジメントの実態を理解し、そこから学ぶ姿勢の重要性が増してきている。(3)自己決定のサポート:長期にわたって自己決定が繰り返されるためそのサポートは重要である。特に、腎代替療法の選択や透析の継続や中止に関する決定には、看護師がより積極的に関わる必要性が示唆された。(4)専門技術を持つ看護師の活用:CKDや腎代替療法、慢性看護に関しての教育を受け、専門技術と知識を持った看護師を活用することがより重要となっている。人材育成、働く環境の整備とともに、現在活躍中の透析認定看護師、透析療法指導看護師、慢性疾患専門看護師などの専門家のケア効果のエビデンスを明らかにし、より専門性を発揮する方向性を検討していくことが期待される。
- 2010-03-31
著者
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