IBD(Inflammatory Bowel Disease)をもつ人々の経験 : 専門科の少ない地域での療養生活に焦点をあてて (奨励研究報告抄録)
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概要
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専門の医療機関が少ない地域でのIBD を持つ人々の病いの経験を明らかにすることを目的に、面接調査を実施した。研究協力を得られた4名は、平均年齢34 歳で発症後十数年を経過しており、発症直後から何度も心身の危機的状況を乗り越えてきていた。現在は、自身に適した療養法をほぼ習得しており、体調をアセスメントしながら自分なりの「健康」な状態を維持しようとしていた。病気に伴う社会的困難は、難病という衝撃を強めていた。病いは将来への夢を諦めさせることもある一方で、新しい目標を見出す契機となることもあり、人々は人生の方向性を変化させて対応してきた。IBD とうまく付き合うためには、個人的な患者同士の関わりや患者会が大きな役割を担っている。そこには、(1)疾患や医療機関について情報を得る、(2)病いに関する種々の問題への対応方法のヒントを得る、(3)同じ病いを持つ人々の経験を知る、(4)自分の状況をきいてもらう、(5)病の経験を共有することが心のケアとなる、(6)生活全般について助け合う、の6つの意味があることが明らかとなった。医療者がそのような場を設定しサポートすることも意義のあることと考えられた。IBD の専門科がない地域では、医療環境を整備する必要性が示唆された。地域での施設間の連携を充実させ、適切な治療が受けられる医療環境を整備し、入院生活から在宅療養へ不安なく移行できるシステムを構築していくことは、重要な課題である。看護職は寛解の維持を援助するだけでなく、その生活を理解し、医療サービスのコーディネーターとしての役割を担う必要があると考えられた。
- 日本赤十字九州国際看護大学の論文
- 2006-12-22
著者
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