口腔悪性病変の発現遺伝子解析と診断応用への試み
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概要
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口腔悪性病変で特異的に発現の変化するマーカー遺伝子を抽出し、それを用いた遺伝子診断モデルの構築を試みた。さらにそれが未知の検体に対してどのような診断精度を示すか検討した。先ず口腔前癌病変である白板症と口腔扁平上皮癌の鑑別を試みた。そのために白板症から扁平上皮癌に至る発現遺伝子の変化をマイクロアレイ法で16,200種の遺伝子の中で比較し、118種のマーカー遺伝子候補を得た。さらにその中から定量的PCR 法により真に白板症と扁平上皮癌の間で優位差を示すマーカー遺伝子を27種選別した。線形判別解析と逐次増加法により診断に必要なパラメーター(遺伝子)を抽出し、診断モデルの構築を行なった。その結果、11種のマーカー遺伝子が抽出され、それに基づいた白板症と扁平上皮癌の鑑別診断モデルを構築した。次いでLeave-one-out 検証法により未知の検体に対する予測精度を検討すると、95%以上の高値を示した。さらに、7種のマーカー遺伝子を用いて軽度および高度異型成の鑑別診断を行なうモデルを構築した。次いで、同様のアプローチにより、悪性度の高い症例群の鑑別診断を試みた。リンパ節転移を伴う扁平上皮癌と、伴わないものとの間で発現遺伝子解析を行ない、悪性度との相関が高いとされる山本-小浜の浸潤度分類と有意に相関するマーカー遺伝子群53種を同定した。線形判別解析と逐次増加法およびLeave-oneout検証法によりモデル構築と診断予測精度を検討した。その結果、発現遺伝子に基づいて浸潤度分類の5段階評価(グレード1、2、3、4C、4D)をそれぞれ16から25種のマーカー遺伝子を用いてほぼ92%から95%の確度で分類可能な4つの遺伝子診断モデルを構築した。これらの診断モデルは口腔悪性病変を客観的にスクリーニングするための手段として効力を発揮することが期待される。
- 2010-02-20
著者
-
近藤 信夫
朝日大学歯学部口腔構造機能発育学講座口腔生化学分野
-
亀山 泰永
朝日大学歯学部口腔構造機能発育学講座口腔生化学分野
-
八代 耕児
朝日大学歯学部口腔構造機能発育学講座口腔生化学分野
-
高山 英次
朝日大学歯学部口腔構造機能発育学講座口腔生化学分野
-
神谷 真子
朝日大学歯学部口腔構造機能発育学講座口腔生化学分野
-
八代 耕児
朝日大学歯学部 口腔生化学講座
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