トントン拍子体験 : 躁病の妄想体験
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概要
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トントン拍子体験とは,すべてが意図せずしておあつらえむきに推移し,かねてから期待していたとおりのことがおこり,これまで長く念じていたことが次々と叶うという体験である.このような、いわば「つきまくる」僥倖体験は,躁性の気分失調に基づいておこるが,しかし誇大妄想とは異なっている.患者はいつもと違って体験される外界で、次々とめぐりくる幸運な過程を目の前にするのだが,体験に対しては受け身の立場におかれる.他方,この僥倖体験は,精神分裂病における妄想知覚などの妄想性の体験様式とも明らかに異なっている.とはいえ,妄想知覚と僥倖体験という二つの妄想体験は,その成立の仕方に平行関係がある.妄想気分や妄想知覚が分裂病経過の早期段階に観察されるのと同じく,トントン拍子体験も最初の躁病相の開始期にみられる.躁病相を何度も経験している患者はこのような体験を陳述しない.慢性分裂病患者に妄想知覚がみられないのと同じ関係である.僥倖体験と妄想知覚の二つの妄想体験の対立性,平行性,そして両者の移行から示唆されるのは,急性妄想精神病の連続体性である.
- 東京女子医科大学の論文
- 1998-09-25
著者
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