脳動脈瘤を伴ったラトケ嚢胞5症例の経験

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ラトケ嚢胞は,画像診断技術の発達に伴い近年報告例が増加している腫瘍である.しかしラトケ嚢胞と脳動脈瘤の合併の報告例は少なく,我々の渉猟し得た範囲では過去2例の文献報告をみるのみである.1980年より1997年7月までに我々の施設および関連病院においてラトケ嚢胞と診断されたものは38症例である.これらのうち動脈瘤を合併した症例を5例経験したので報告する.2例は下垂体部腫瘍症例に術前検査として脳血管撮影を施行したところ動脈瘤が偶然に発見された症例である.3例はくも膜下出血で発症し,そのクリッピング手術の際に,嚢胞性腫瘍が鞍上部に偶然発見されたものである.全症例について切除標本に対し病理学的検査を施行し,ラトケ嚢胞と診断した.ラトケ嚢胞に対する脳動脈瘤の合併頻度は不明であるが,我々はラトケ嚢胞38症例中5例(13%)と高率に動脈瘤の合併を経験した.下垂体腺腫においては約7%に脳動脈瘤の合併を認めるとの報告がなされているが,ラトケ嚢胞についても脳動脈瘤の合併は稀なものではないと考えられた.我々の経験した症例数は,いまだ十分ではなく今後の症例の積重ねが必要と考えられるが,下垂体部の腫瘍を認めた際には脳動脈瘤の存在を考慮し,脳血管撮影を施行すべきと考えられた.また,近年のMRAや3次元CTの進歩により,より非侵襲的に動脈瘤の合併を検索することが可能となってきセいると考えられる.ラトケ嚢胞は良性腫瘍であるが,視神経障害や下垂体機能低下といつた症候を伴うものは積極的な外科治療の必要性を有するものと考えられる.しかし,正常下垂体と腫瘍の位置関係や合併する動脈瘤の位置などにつき,十分に術前検討を加えることが必要と考える.くも膜下出血で発症し偶然ラトケ嚢胞が発見された場合には,術者の疲労度や時間的余裕を考慮して,可能ならば嚢胞切除を行うことが望ましいと考える.
1998-03-25

脳動脈瘤を伴ったラトケ嚢胞5症例の経験

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