直腸癌転移陽性リンパ節における癌細胞占拠比率の臨床的意義
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概要
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直腸癌の転移陽性リンパ節における癌細胞の占拠の程度を分析し,癌のリンパ節浸潤の程度および微小転移の臨床的意義を明らかにすることを目的とした.対象は1994年1月から1997年12月までの4年間で,当科における直腸癌手術例のうち検索可能であった119例で,リンパ節転移陽性例は69例,転移陽性リンパ節294個であった.方法:転移陽性リンパ節の最大割面の病理組織標本を観察し,癌細胞の浸潤面積から(1)転移陰性(grade 0),(2)全体の1/4以下の転移(grade 1),(3)1/4〜1/2以下の転移(grade 2),(4)1/2〜わずかに正常リンパ組織が残存(grade 3-(1)),(5)完全に癌細胞で置き換わっている(grade 3-(2)),(6)分類不可能(grade 3-(3))に分類した.特にgrade 1に着目し,癌浸潤面積と臨床病理学的因子との関連を検討した.結果:1,931個のリンパ節のうち転移陰性1,637個(84.8%)に対し転移陽性は294個(15.2%)であった.臨床病理学的因子との関連は,原発巣の壁深達度がSS(A)以下の症例に有意にgrade 1が多かった.その他の臨床病理学的因子では相関関係は認めなかった.しかしながらリンパ節転移grade別にみるとN1にgrade 1が多かった(p=0.008).臨床病期別に検討を加えると1/4以下のリンパ節転移は転移総数が3個までのリンパ節転移,つまりStage IIIaに多かった(p=0.0011).これはリンパ節への癌の転移,浸潤過程の初期の状態を観察していると考えられる.grade 1を含みリンパ節個数の少ない症例の5年生存率は,単独転移が87.5%,転移リンパ節総数が2個までで70.0%,3個までで63.6%であった.症例が少なく推測にすぎないが,生存率は転移巣の占有比率の低い症例では,リンパ節転移があっても転移個数の少ない症例の方が予後が比較的良好である傾向であった.リンパ節転移の有無は予後を左右する重要な因子である.リンパ節転移の形態を検討し,それを明らかにすることが,微小転移の診断およびその臨床的意義の解明に寄与するものと考えられた.
- 東京女子医科大学の論文
著者
-
板橋 道朗
東京女子医科大学医学部外科学(第二)
-
亀岡 信悟
東京女子医科大学医学部外科学(第二)
-
木村 政人
東京女子医科大学医学部第二外科学
-
板橋 道朗
東京女子医科大学 第2外科
-
木村 政人
東京女子医科大学
-
亀岡 信悟
東京女子医科大学
-
板橋 道朗
東京女子医大第二外科
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