バイロンと海 : 『ドン・ジュアン』と『マゼッパ』を読む
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概要
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海は生命の源である。太古の昔、海中で原始的な生命が誕生し、次第にそれが高等化した。最初の脊椎動物である魚類は、海中生活に適するようにエラで呼吸していた。やがて、彼らは上陸し、それとともに陸上生活に適した肺呼吸が始まる。最初、大気中の二酸化炭素量が極めて多く、その温室効果のため陸上の気温はかなり高かったといわれているが、次第に二酸化炭素が減少して大気の気温が下がり、陸上は生物が生活するのに適した環境になったようだ。陸上の生物は、主として森で暮らすようになる。人類の先祖も森の住人であった。現代の大都市の中で、人々は緑の植物を生活の中に取りいれガーデニングが世界的なブームを呼んでいるのも、人々の原始回帰願望を表わしているのかもしれない。そして、文学作品の中でも、森への憧憬は随所に見受けられる。森はしばしば海と同義で用いられているのではないか? 日本語でも、鬱蒼と茂る大森林は「樹海」と表現される。森への憧憬は、同時に生命の故郷である海への憧憬をも意味するようだ。本稿では、イギリス・ロマン派詩人の中でも、とりわけ「海」を愛した、バイロンの作品を中心として、「海」と「森」のイメージを探ってみたい。
- 2009-12-08
著者
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