アルカリ資材を用いた土壌pH矯正によるダイズのカドミウム吸収抑制
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概要
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神通川流域で土壌pHが低く,玄米カドミウム濃度が0.4mgkg^<-1>程度となる汚染レベルの低い県有農用地において,アルカリ資材を用いた土壌pH矯正によるダイズのカドミウム吸収抑制効果について検討した.1)アルカリ資材施用により跡地土壌pHは5〜7の範囲で変化し,ダイズ子実カドミウム濃度はpH6〜7の範囲で0.5mgkg^<-1>程度から0.25mgkg^<-1>程度の水準に低減された.2)開花期および子実肥大盛期における地上部カドミウム濃度および集積量は土壌pHに対し直線的に低下しており,土壌pH矯正が生殖成長初期までの地上部へのカドミウム集積を抑制する効果が認められた.3)土壌溶液カドミウム濃度は土壌pHの上昇に伴い指数関数的に低下しており,アルカリ資材で土壌pHを矯正することにより土壌溶液のカドミウム濃度が低下し,ダイズの経根吸収量が低減されたものと推察された.4)ダイズの生産性に対する土壌pH矯正の影響については,生殖成長初期の乾物重および主茎長が増大し,子実収量の増加に寄与する場合があるが,生殖成長期の気象条件によっては倒伏による減収が懸念されるほか,pH7付近ではマンガン欠乏による生育障害の発生等のリスクを伴うものと推察された.以上のことから,低汚染レベルの圃場でダイズ子実カドミウム濃度を低減するには,アルカリ資材を用いた土壌pH矯正が有効であると考えられた.
- 2009-12-05
著者
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稲原 誠
富山県農林水産総合技術センター:(現)富山県農林水産部農業技術課
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雄川 洋子
富山県農林水産総合技術センター:(現)富山県農林水産部農業技術課広域普及指導センター
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稲原 誠
富山県農林水産総合技術センター
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雄川 洋子
富山県農林水産総合技術センター:(現)富山県農林水産部農業技術課
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