異なる水管理下でのアルカリ資材による水稲のカドミウム吸収抑制効果
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
神通川流域で土壌pHが低く,玄米カドミウム濃度が0.4mg kg^<-1>程度となる汚染レベルの低い県有農用地において,アルカリ資材の連用による水稲のカドミウム吸収抑制効果について水管理処理を組み合わせて検討した.1)アルカリ資材の連用による玄米カドミウム濃度の低減効果は,中干し後間断灌漑を継続した処理区で連用3年目から認められたが,平均値+99%信頼区間は政府米の流通基準(0.4mg kg^<-1>)を上回っており効果の安定性は不十分であった.湛水処理を伴う処理区では,試験初年目より安定した低減効果が認められ,アルカリ資材による上乗せ効果は認められなかった.2)アルカリ資材の連用による土壌pHの矯正効果は,中干しや間断灌漑により土壌を酸化的に経過させた期間において顕著であった.また,アルカリ資材のカドミウム吸収抑制効果が認められた処理区では,出穂前後40日間の土壌の酸化還元電位が200mV以上でpHが5程度から6程度に矯正されていた.3)水稲の生育は,アルカリ資材の連用に起因したアルカリ効果により促進され,年次によっては早期の倒伏により減収に至った.この倒伏による減収は湛水処理を併用することにより回避された.また,アルカリ資材に含まれるケイ酸分により水稲のケイ酸濃度が高められ,草姿改善などの効果が期待された.これらのことから,土壌の汚染レベルとpHの低い圃場においては,ケイ酸を含むアルカリ資材の連用処理と後期湛水処理を組み合わせることにより,土壌pHを矯正しながら,水稲のカドミウム吸収抑制と生育・収量の安定化を図ることができるものと考えられた.
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 2007-06-05
著者
-
稲原 誠
富山県農林水産総合技術センター:(現)富山県農林水産部農業技術課
-
雄川 洋子
富山県農林水産総合技術センター:(現)富山県農林水産部農業技術課広域普及指導センター
-
稲原 誠
富山県農業技術課
-
雄川 洋子
富山県農業技術センター
-
東 英男
富山県農業技術センター
-
東 英男
富山県農業技術センター:(現)砺波農業普及指導センター
関連論文
- アルカリ資材を用いた土壌pH矯正によるダイズのカドミウム吸収抑制
- 稲作期間の水管理が白未熟粒の発生に及ぼす影響
- 1 水稲の生育・収量及び養分吸収に対する生育後期の湛水管理の影響(中部支部講演会,2008年度各支部会)
- 8 ダイズのカドミウム吸収に及ぼす土壌pHの影響(中部支部講演会,2008年度各支部会)
- 21 畑土壌におけるアルカリ資材のpH矯正効果に及ぼす土壌水分の影響(中部支部講演会,2006年度各支部会)
- 22-10 アルカリ資材によるダイズのカドミウム吸収抑制 : 資材の性状と潅水処理の影響(22.環境保全,2007年度東京大会)
- 異なる水管理下でのアルカリ資材による水稲のカドミウム吸収抑制効果
- 生育後期の湛水管理による水稲のカドミウム吸収抑制
- 富山県の農業と土壌肥料
- 20-40 粗粒質乾田における水稲コシヒカリの全量基肥施肥法 : 水稲の窒素吸収と生育・収量(20.肥料・施肥法)
- 20-5 被覆尿素を用いたテープ肥料によるホウレンソウの施肥方法(20.肥料・施肥法)
- 20-7 粗粒質乾田における水稲コシヒカリへの時限式肥効調節型肥料を用いた全量基肥施肥法(20.肥料・施肥法)
- 8 シグモイド型被覆尿素がコシヒカリの収量構成要および玄米品質に及ぼす影響(中部支部講演要旨(その1))
- 20-7 全量基肥施肥法によるコシヒカリの乾物生産能力(20.肥料・施肥法)
- 9 全量基肥施肥栽培によるコシヒカリの形態的特徴(中部支部講演会要旨)
- 10-5 シグモイド型被覆尿素がコシヒカリの乾物生産に及ぼす影響(10.肥料および施肥法)
- 8-10 転換畑における土壌の乾燥程度とカラーの生育(8.畑地,草地および園地土壌の肥沃度)
- 10-17 被覆尿素(LPSS)の溶出とコシヒカリの窒素吸収(10. 肥料および施肥法)
- コシヒカリの三要素試験区における20年目の生育と根系生育(日本作物学会第216回講演会要旨・資料集)
- 12 水稲栽培でリンまたはカリの施用は必要か : 19年間の水稲三要素継続試験から
- 水稲栽培による水田土壌からのリン酸とカリの収奪量と水稲の適正施肥
- 土壌洗浄法によるCd汚染水田の実用的浄化技術を確立 : 低コストで水田土壌のCdを除去
- 19 水稲の生育・収量及び養分吸収に対する生育後期の湛水管理の影響(第2報)(中部支部講演会,2009年度各支部会)
- 水稲品種「IR8」を用いたカドミウム汚染水田における土壌浄化