2008年度小野川湖沼観測概要
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概要
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はじめに 裏磐梯の桧原湖、秋元湖、小野川湖、曽原湖は、1888年の磐梯山噴火の際生じた大規模な泥流により河谷が堰き止められて生じた堰き止め湖である。同時に、泥流上の凹凸は、数多くの小規模な湖沼を生じた。当研究室では、1991年から裏磐梯湖沼の観測を始めた。その結果の一部は、公表されている。Sato et al.(1993)では、桧原湖の1991年の栄養塩等の時空間分布、栄養状態、探水層における窒素代謝を報告した。裏磐梯のそれぞれの堰き止め湖の湖底には、未だ水没した立木が存在するが、Sato et al.(1995)で、小野川湖における湖中林の分布を明らかにした。Sato et al.(1996)では、1993年、1994年の観測に基づき、小野川湖の栄養塩等の時空間分布を明らかにし、栄養状態を論じた。1994年には秋元湖の定期観測を実施し、栄養塩類等の時空間分布に基づき、秋元湖と姉妹湖である桧原湖(Sato et al. 1993)、小野川湖(Sato et al.1996)3つの湖が、生誕後百年余りの間にどのよう違いが生じたかを明らかにした(Sato et al. 1997)。観光名所、五色沼の一方の入り口に毘抄門沼がある。1996年には、毘沙門沼の水質化学を報告した(Sugawara et al. 1999)。2000年には、1991年以来の桧原湖の観測に基づき、桧原湖の深水層は、夏の成層期は冬の成層期に比べ、水温も高く期間も長いのに溶存酸素は枯渇しないのに対し、冬には、しばしば嫌気的になることを示した(Sato et al. 2000)。1998年は、日本各地が集中豪雨に見舞われた。小野川湖の集中豪雨中の観測が、1997年との対比より、湖に洪水が引き起こす影響を如実に示し貴重な知見となった(Sato et al. 2001)。1994年から2000年までの観測に基づき、小野川の夏季成層期に深水層に蓄積するアンモニアの制御因子と集中豪雨の後遺症につき論じた(Sato et al. 2002)。湖沼で鉄、マンガンは、嫌気的環境では還元態で存在し、湖水中溶けているが、好気的環境では酸化された状態で存在し、これらは溶解度が小さく堆積物中に沈殿するが、この時、鉄の沈殿は様々な物質を共沈することが知られている。Sato et al. (2006)は、天然の湖水中の溶存鉄が沈澱する時、天然に存在する溶存有機物を共沈することを初めて示した。本稿では、2008年度の観測概要を報告する。
著者
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