琵琶湖西岸流域におけるタブノキ個体群の分布と地域植生
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概要
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本研究は,滋賀県琵琶湖西岸(湖西)流域の安曇川,鴨川および石田川を対象に,タブノキ個体群の分布を明らかにするとともに,滋賀県におけるタブノキ個体群の植生環境を解析することを目的としている。2006年8月から2007年2月までの期間に滋賀県全域を踏査し,タブノキ個体群の位置をGPSによって記録した。その後,湖西の三河川を対象に,2007年6月から2008年2月の期間に現地調査を実施し,タブノキおよびタブノキ個体群の分布図をGISによって作成した。タブノキ個体群の半径1kmエリア(GIS図面積概算3.13 km^2)の植生比率から,タブノキ林がきわめて孤立化していることが明らかにされた。現地調査から,成熟したタブノキ(胸高直径:〓20 cm)は安曇川の河畔林で13個体,鴨川で47個体,石田川で8個体が確認された。河畔林以外には,安曇川流域の社寺境内にタブノキの大径木(DBH〓100 cm)が確認された。現地調査とGISによる植生解析から,タブノキが地域植生や文化と深く関わっていることが明らかにされたが,上記三河川の河畔に生育するタブノキ個体群のうち,平均すると78.9±7.8%の個体群がモウソウチク林やマダケ林など,竹林の侵入を受けていた。以上のことから,竹林の適正管理によって,琵琶湖を特徴づける固有の地域植生として,タブノキ個体群およびタブノキ林の保全をはかることが重要といえる。
著者
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前迫 ゆり
大阪産業大学人間環境学部生活環境学科
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藤脇 崇裕
大阪産業大学人間環境学部生活環境学科前迫研究室
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金子 有子
滋賀県琵琶湖環境科学研究センター
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金子 有子
滋賀県琵琶湖研究所
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金子 有子
琵琶湖環境科学研究センター
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