進化論を比喩から救うために(文学部創設百周年記念論文集I)
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概要
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生物の本質を進化に求め,その進化のメカニズムを自然選択として把握するダーウィンの進化論は1859年の『種の起源』以来多くの野心的な生物学者によって盛んに議論されてきた.議論は多岐にわたり,その結果として生物学の多くの新分野を生み出すことになったが,一方では議論の収拾がますます着きにくくなったのも確かである.ダーウィン以来,進化論は生物研究の基本枠組を与える理論とその信奉者からは位置付けられながら,実際の研究者のなかで表立ってそれを表明するものは意外と少ない.理由は簡単で,進化論のないように対する信頼度が低いからである.私は進化論が生物研究の基礎理論に値すると思っている.(この点は生物学者の多くも内心ではそう思っているであろう.)この思いを素直に進化論の再構成に持っていくのが筋ではあろうが,その下準備として,進化論の現状の歪みや捻れを変則的にだが指摘して,そこから基礎理論としてどのような特徴付けが可能なのかをスケッチしてみよう.以下の叙述は,したがって,進化論の偏向をまず際立たせ,それが現在の進化論の内容にどのような結果をもたらしているかを考えてみることにする.そして,進化論が生物研究の基礎理論となるべき条件を探ってみよう.
- 慶應義塾大学の論文
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