養殖ノリに付着する珪藻Tabularia affinisを殺滅する珪藻殺滅細菌の検索

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海洋において重要な一次生産者である珪藻の中には,ノリ養殖場に出現し,ノリ養殖に甚大な被害を与えるものがある。例えば,有明海においてはSkeletonema costatumなどの浮遊性珪藻がしばしばブルームを形成し,ノリの成長に必要な栄養塩が大量に消費され,ノリの色落ちによる大きな被害が発生する。また,ノリの浮流養殖において,ノリ葉体やノリ網にLicnmophora sp.などの付着珪藻が多く付着し,その結果,どたぐされ症などノリの品質低下を引き起こす。これらの珪藻はノリ養殖の害藻であり,ノリ製品の品質の低下や,ノリ養殖の豊凶を左右する一つの要因となっている。一方,ノリの病気の発生や価格低下といった被害を引き起こす付着珪藻への対策として酸処理による除去法が開発され,付着によりノリ細胞に悪影響を及ぼす珪藻の除去に大きな効果を上げてきた。ところが,近年,兵庫県をはじめとする瀬戸内海のノリ養殖場において,新種の付着珪藻による漁業被害が発生した。例えば,1シーズンに3億数千万枚,30数億円の水揚げを誇り,瀬戸内海最大のノリ養殖で知られる兵庫県では,1995年1月下旬頃から2月末,および3月下旬から4月上旬にかけて,新種の付着珪藻が大発生し,品質の低下による価格低下が引き起こされ,全売り上げの1割以上にあたる3億数千万円の漁業被害があった。この時発生した珪藻は付着性のTabularia affinisであることが判明した。T. affinisは酸処理ではほとんど脱落せず死滅もしないことから,現在効果的な防除法は存在しない。また,本種は-25℃で約3ヶ月冷凍保存をおこなっても死滅しないという高い冷凍耐性を持つことから,種網にこの珪藻が付着すると長期にわたって被害が発生するおそれがある。したがって,T. affinisを防除する方法を確立することは緊急の課題となっている。我々は,T. affinisの効果的な除去法の可能性の一つとして,土壌の分野では実用化が進んでいる微生物農薬を用いた除去法に着目した。環境中から分離した,ノリに影響を与えずに珪藻を殺滅する細菌を用いて付着珪藻のみを殺滅する方法を確立することで,ノリおよびノリ養殖場周辺の環境に影響の少ない防除法の開発が可能になると思われる。そこで,本研究では,環境中から分離された珪藻殺滅細菌の中からT. affinisを殺滅する細菌を検索することを目的として,有明海のノリ養殖場の周辺海域から珪藻S. costatum NIES-324株を殺滅することを指標に分離された細菌11株を用いてT. affinisを殺藻する活性を持つかどうかを検討した。
福山大学の論文

養殖ノリに付着する珪藻Tabularia affinisを殺滅する珪藻殺滅細菌の検索

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