海産渦鞭毛藻Crypthecodinium cohniiにおけるジメチルスルフォニオプロピオン酸の生合成に関する研究
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概要
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DMSPの生理機能の一つは浸透圧調節であると考えられている。渦鞭毛藻C. cohniiを用いて,浸透圧変化の要因として塩濃度の変動にともなう細胞内DMSP量の変動,またC. cohniiのDMSP生合成経路の鍵酵素と考えられるメチオニン脱炭酸酵素の比活性の変動について検討した。C. cohniiは,1.5%NaClから3.5%NaClの範囲で,塩濃度が低いほど良い増殖を示した。これはC. cohniiが汽水域の貯木場などに生息する種であることを反映していると考えられた。また,塩濃度が高いほど細胞内DMSP量,メチオニン脱炭酸酵素の比活性は高いという傾向がみられ,高浸透圧条件ではDMSP量を能動的に高く維持して適応する機構が存在することが示唆された。培地の塩濃度の変化にともなうCeoo加ガ細胞内DMSP量,メチオニン脱炭酸酵素の比活性,および細胞外DMS量の変化を検討したところ,低塩濃度から高塩濃度の培地に移して6時間後には細胞内DMSP量,メチオニン脱炭酸酵素の比活性は2倍程度上昇した。高塩濃度から低塩濃度の培地に移して6時間後には細胞内DMSP量,メチオニン脱炭酸酵素活性は約半分に減少し,そのとき細胞外DMS濃度は3倍以上上昇した。これらの結果から,C. cohniiは,細胞外の浸透圧が上昇するとDMSP合成系の活性化によって細胞内DMSP量を増加させて細胞内の浸透圧を高め,逆に細胞外の浸透圧が下がるとDMSP合成系の抑制,分解系の活性化により細胞内DMSP量を減少させて細胞内の浸透圧を下げて新たな浸透圧条件に適応するのではないかと考えられた。また,C. cohniiは浸透圧変化によって6時間以内にDMSP量を変動させることから,C. cohniiにおいてDMSPは,緑藻E. intestinalisにおけるsteady stateでの浸透圧調節機構iとは異なる機構に関与していることが示唆された。
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