第三脳室内および近傍の腫瘍の脳神経外科治療

概要

論文の詳細を見る
筆者が1998年に女子医科大学に赴任して以来、2009年2月までに第三脳室およびその近傍の腫瘍の外科治療例は、下垂体腺腫524例、ラトケのう胞120例、頭蓋咽頭腫98例、髄膜腫34例、視床下部グリオーマ22例など857例の外科治療が行われた。下垂体腺腫では原則として一側経鼻経蝶形骨洞アプローチにて手術用顕微鏡および内視鏡を使用して手術を行ってきた。また頭蓋咽頭腫では98例のうち、一側経鼻経蝶形骨洞アプローチを使用した症例もあるが、腫瘍が第三脳室に主座を占める場合には前大脳半球間裂経終板アプローチ(AIH)を使用して、全摘を目指して手術を行ってきた、また視床下部グリオーマについてもAIHを用いて手術を行ってきた。下垂体腺腫のうちGH産生腺腫(アクロ)は治癒判定基準(コルチナコンセンサス)が確立されており、手術成績の向上を判断するのに最適であり、今回TSRの手術上達を判断する材料とした。 1998年から2008年の10年間に経験したアクロ134例のうちKNOSPグレード0,1, 90例の手術成績を1)98年-01年(33例), 2)02-05(30), 3)06-08(27)の三期に分けて、治癒基準に合致する%で検討した。 1)期では47.1%、2期76.7%、3期100%であった。またKNOSPグレード2-3(26例)でも1)+2)期33.3%、3期75%と向上していた。また1)、2)、3)期で正常下垂体機能低下率も含めた合併症には有意の差は認められなかった。頭蓋咽頭腫ではAIHを用いて手術を行った46例では37例で全摘出が行われた(80.4%)、また手術死亡は無かった。 AIHを用いた12例の視床下部グリオーマでも亜全摘率は100%で手術死亡は無く、2例で再増大が見られたが、10例では化学療法も放射線治療も行わずに経過中腫瘍の再増大は無かった。下垂体腺腫・頭蓋咽頭腫・視床下部グリオーマでの手術時腫瘍と正常組織のインターフェースを把握して、前2者では腫瘍(仮性)被膜外全摘出を、視床下部グリオーマでは亜全摘を手術方針とした。これらの治療成績は国際的にも最も優れた成績と思われる。
2009-10-25

第三脳室内および近傍の腫瘍の脳神経外科治療

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク