多文化教育のカリキュラム開発と文化人類学 : 学校における多文化共生の実践にむけて(<特集>多文化共生と文化人類学)
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概要
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1980年代以降、日本社会の多文化化が進展する中で、多文化共生に向けた教育への行政的取り組みとして、いくつかの自治体によって「在日外国人教育方針(指針)」づくりが行われ、それに呼応して教育現場においてもさまざまな実践がなされてきている。従来これらの多文化共生に向けた教育の取り組みの多くは、主にマイノリティである外国人児童生徒のための教育支援として語られ、実践されてきた。しかし、多文化共生に向けた教育の取り組みはマイノリティの外国人児童生徒の問題としてのみとらえるのではなく、その差別構造を支えるマジョリティの日本人児童生徒の問題としてもとらえる必要がある。なぜなら、マジョリティの意識変革なくして多文化共生はあり得ないからである。そこで本稿では、マジョリティを含むすべての児童生徒のための多文化共生に向けたカリキュラムの分析を通してその課題を明らかにするとともに、そのカリキュラム開発において文化人類学の概念や内容がどのように活用できるかについて検討する。具体的には、まず多文化共生のための資質形成を目的とする多文化教育のカリキュラム開発に文化人類学の内容や方法を活用した事例を米国の実践の中から紹介するとともに、「概念的多文化カリキュラム」(Conceptual Multicultural Curriculum)という方法を提唱した米国の多文化教育学者J.A.バンクス(James A.BANKS)の理論の検討を通して、多文化カリキュラムを構成する基本概念に文化人類学が貢献していることを明らかにする。次に、バンクスらの多文化カリキュラムの理論に学んで、台湾において漢民族と先住民族との共生をめざす「族群関係カリキュラム」の開発と具体的な教材づくりをおこなった陳麗華の理論と実践構想の意義を明らかにする。最後に、バンクスや陳の多文化カリキュラムを思考モデルにして、日本において実行可能な多文化カリキュラムの実践構想を小中学校の社会科を例に提案する。
- 2009-06-30
著者
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