近縁なウグイス2種,Cettia seebohmiとC. diphoneの音声による種の認知(西太平洋における島弧の自然史科学的総合研究 第1期:台湾およびフィリピン)
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概要
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同種の個体と他種の個体を識別する能力は,動物種間の生殖隔離を成立させる要因の一つである.一般に,鳥類では形態や羽色とともに,さえずりがこのような種の認知の重要な手がかりになると考えられている.そこで本研究では,日本のウグイスCettia diphoneの雄が自種のさえずりとフィリピンのウグイスC. seebohmiのさえずりを区別できるかどうかを,野外における音声再生実験によって検証した.それぞれの種のさえずりに対する雄の排他的行動をさえずり回数,威嚇の信号といわれるL型さえずりの割合,飛翔回数,スピーカーから5m以内にいる時間の4つの変数によって比較したところ,雄の反応に統計的に有意な差は認められなかった.雄がさえずりを区別しない理由として,同種を異種と誤認するコストが異種を同種と誤認するコストに比べて大きいことが考えられる.これに対して,実験回数は少ないものの,フィリピンのウグイスの雄は日本のウグイスのさえずりよりも自種のさえずりに対して強く反応する傾向が見られた.フィリピンでは生息密度が低いために雄間の競争が弱いことが影響しているのかも知れない.
著者
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濱尾 章二
国立科学博物館附属自然教育園
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濱尾 章二
Institute for Nature Study, National Science Museum
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Veluz Maria
Zoology Division, National Museum of the Philippines
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西海 功
Department of Zoology, National Science Museum, Tokyo
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濱尾 章二
Institute For Nature Study National Science Museum
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Veluz Maria
Zoology Division National Museum Of The Philippines
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西海 功
Department Of Zoology National Science Museum
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