『阿闍世王経』と『阿闍世王授決經』
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概要
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本稿では,『阿闍世王経』(Ajatasatrukaukryavinodanasutra)の第11章末尾から第12章冒頭にかけての部分と『阿闍世王授決經』(大正No.509.以下『授決經』と略称)末尾部分の間において,類似した叙述が見られることを報告するとともに,両経の当該部分をめぐる編纂事情について考察した.両経の間で共通した記述とは,具体的には「阿闍世王とその王太子への授記」に関するものであり,固有名詞や数詞が一致あるいは類似していることから両経の間に編纂上の関わりがあったことは疑いない.『授決經』のほうが『阿闍世王経』よりも簡潔な表現となっていることなどから,『阿闍世王経』が『授決經』を参照にしたか,『授決經』と『阿闍世王経』の間に共通の典拠があったものと推測される.以上の考察は『阿闍世王経』の編纂過程解明の一助となるものである.
- 2009-03-25
著者
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