9. 熱海市の都市化に伴う環境保全
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概要
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熱海市は恵まれた自然景観,温暖な気候,豊富な温泉資源などをもとに成長した観光保養都市である。1950年の大火災の復興事業や時代的背景を契機として,不燃化建築への移行,鉄筋構造と高層建築の増加,旅館やホテルの大型化,建設場所の高位置への上昇傾向等の特性を示しながら都市的土地利用は拡大していった。また,人口の増加に伴う住宅需要に対応するように建設された市営住宅や一般住宅も山地斜面の階段化によって造成された平坦地に立地する例が多く,その位置も河川沿いの上流部に這いあがっている。そのために神戸市とか長崎市と同様な性質の斜面都市,急坂都市でもある。海岸や河川にそう低地や平坦地が限られているために都市化が山地や丘陵性の斜面に拡がったために地形や生態系の改変が問題となった。このことは快適性とか利便性といった日常的な生活環境については充足されるにしても,災害に対する潜在的な危険性は増大してきている。したがって,安全性の確保とか保全の必要な環境といった状況が生起してきている。環境保全の課題のひとつは都市化した限定された区域のみでそのことに対処するのではなく,広い範囲での問題として把握する方法や姿勢がもとめられる.例えば,斜面地くずれや山腹崩壊などの発生が予想される急傾斜の山地面積は広く,その現象は地形形成のプロセスとしての意味もあるが,土石流や地滑りの発生する素因でもある。また背後の山地は火山活動や断層運動による破壊や変形などをうけた地質や岩石からなる地域である点も注意すべきであろう。河川にしてもその流域の水系網の特性や河川勾配はその流域から生産される供給物質や送流の様式にも関係する。同時にそのような自然の環境の分布や配列などにも着目することにより,影響範囲の推定や関連する項目の実態を認識することも可能になる。そのためにも環境を図化することが地域理解の重要な作業となる。
著者
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