18.静岡県におけるため池の現状とその安全性
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概要
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ある地域における安全性,危険性の評価はその地域の自然的条件とともに,その地域のもつ社会的,歴史的,文化的条件の検討も含めてなされる必要があり,当然のことながら,その多様性をもとに地域のかかえる課題を把握しなければならい。阪神・淡路大震災では都市部における甚大な被害とともに農村部においても農業用水水利施設の被害などが報告されている。とくに,多くのため池を有する兵庫県におけるその被害は大きかった。静岡県でも掛川市を中心とする中遠地域にはため池が集中的に分布し,東南海地震などでも被害をうけてきた。この地域は地形や降水量など自然的条件の特性によって古くから旱魃の被害の頻度が高く,江戸期以降,安定した水田耕作のために農業用水源としてため池を築造し,それに依存してきた歴史をもっている。そこで,その人工構造物,人工改変地であるため池の施設としの安全性,また,水源確保としての安全性などが課題となってくる。また,その築造に関して,地域の人々の共同体的意識は地域社会の安全性の維持に関して寄与してきた部分があったといえる。しかし,時代の進行とともに新規の農業用水水利施設による統合や整備によってため池の潰廃や放棄がみられる。それにしても,地域的には特色ある農業景観としての風景をもち.その機能をもちつづけているといえる。そして,ため池跡地の利用や修景により親水性をもたせるように変貌をきたしている場合もあるが,土地の履歴を注視しながら安全性への対応が求められていることでもある。このように。多面的な問題をもつため池の現状と問題点について,地域紹介をかねて話題提供としたい。
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