13. 大規模地震時の斜面崩壊危険と住民意識
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概要
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背後に急峻な崖を抱えた地域の住民にとって、降雨時には崖崩れや土石流災害の事がしばしば頭をかすめ、降雨の程度や周囲の地変を察知し、自主的な警戒避難の体制をとるケースも多く見られる。しかし大規模な地震に遭遇した場合には、災害発生の突発性や経験の不足から、警戒避難に至るケースはこれまであまり無く、最近では1978年伊豆大島近海地震(M=7.0)(静岡県,1978)や、1984年長野県西部地震(M=6.8)(長野県,1984)に見られるように本震により不安定な斜面が発生したため、二次災害を警戒し余震時に避難行動に出るケースがほとんどである。地震災害の発生が豪雨災害に比較し頻度が低いため、山間地域の住民にとって山崩れは降雨と直結して考えがちである。しかし過去に山間地域を襲った大規模地震を見れば、震度V強を越える地震動を受けると山崩れ災害が発生し、震度VI以上の烈震が襲うと必ず大規模な山地災害を引き起こしている。東海地域において近年の最大の災害課題は、将来発生するであろうと予測されている東海地震(石橋,1976)に対して、災害をいかに減少し、少なくとも人的被害を皆無にする事である。このための新たな法制度として「大規模地震対策特別措置法」(昭和53年施行)が制定された。この法律では、大規模な地震に備え、各種の対策を各機関が行う責務を有すると共に、地震の発生が相当切迫した場合には、内閣総理大臣が大規模地震に対する「警戒宣言」を発することとなっている。警戒宣言が適切に発せられれば、山崩れ災害に対しても事前の警戒避難体制をとる事が十分可能となり、従来の地震時の山崩れ災害の観点を大きく変える可能性がある。これらの法的環境や災害環境の変化に対し、地震時の斜面崩壊危険の把握と避難の在り方、山間地域の住民意識の違い住民や行政機関のとるべき防災等について考察を行う。一方、現在は科学的な定量化や法則、対処マニュアル、広報啓発など様々な分野で災害防止のための努力が成されなければならない。しかし一方で自ら身の安全を確保するための努力を、現代文明が少しずつ薄れさせているのではないかという議論もある。この様な観点を交えながらも今後の議論として斜面崩壊に関する定量的な危険度判定の手法、適切な防災事業の在り方、地域振興や過疎化の防止等、残されている問題が多い。それぞれの問題について地域住民や災害研究者、行政機関等が今後の山崩れ災害を防止するため、一丸となって一層努力していかなければならないと考える。
著者
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