歯頸部コンポジットレジン修復の有限要素解析 : エナメルベベルの温度変化および咬合力によって生じる応力への影響

概要

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われわれはこれまでに,セルフエッチングプライマーシステムを用いてくさび状欠損窩洞を修復した場合,繰り返し温度変化や荷重を負荷したとき歯頂側エナメル質窩縁の封鎖性が劣化したが,エナメルベベルを付与することによって,辺縁漏洩はほとんど阻止できることを明らかにした.本研究では,温度変化を与えたときの歯頸部コンポジットレジン修復の接着界面に生じた応力分布について有限要素法を用いて解析した.さらに,温度変化や荷重を負荷したときのエナメルベベルの影響についても解析し,辺縁封鎖性との関連性を検討した.前報で作製した試料を,長軸方向に半切した面をシミュレートした有限要素モデルを作製し(Ansys 7.0),四辺形8節点要素を用いて要素分割を行った.温度変化を与えたモデルは,節点数4,044,要素数1,228から構成された.解析に使用したエナメル質,象牙質およびコンポジットレジンのヤング率,ポアソン比,熱膨張係数はそれぞれ,41.4GPa,18.6GPa,10.0GPa,0.3,0.3,0.3,1.2×10^<-5>/℃,0.8×10^<-5>/℃,2.5×10^<-5>/℃とした.なお,歯髄は,そのヤング率がエナメル質や象牙質に比べとても小さいので,空隙として作製した.次に,根尖の一点をX,Y方向ともに固定し,モデルに一様の温度変化を与えて解析を行った.温度変化に伴う変形は,各材質において均一,等方性を示すものと仮定した.設定温度は23℃とした.作製したモデルに一様に温度変化(+37℃と-18℃)を与えて解析を行った.さらに,エナメルベベルを付与した解析モデルも作製し,温度変化(節点数4,335,要素数1,323)あるいは咬合荷重(節点数3,087,要素数920)を負荷して歯頂側窩縁部の応力分布をベベルを付与していないモデルと比較検討した.一様の温度変化を与えたとき,冷却時は接着界面に沿って引張と剪断応力が発生し,加熱時は圧縮と剪断応力が発生した.また,歯頂側窩壁と歯肉側窩壁に生じたフォン・ミーゼスの相当応力の大きさには有意差はみられなかったが,応力の垂直成分は歯肉側象牙質壁表層部と比較し,歯頂側エナメル質象牙質壁表層部のほうが大きかった.エナメルベベルの付与は,歯頂側壁に生じた引張応力を緩和した.したがって本研究から,温度変化を与えたとき,加熱時は接着界面上に主に圧縮応力が生じ,冷却時は主に引張応力が生じることが明らかとなった.さらにエナメルベベルを付与すると,温度変化や咬合荷重を負荷しても,歯頂側窩縁部の垂直成分は大きく減少することが示唆された.
特定非営利活動法人日本歯科保存学会の論文
2007-10-31

歯頸部コンポジットレジン修復の有限要素解析 : エナメルベベルの温度変化および咬合力によって生じる応力への影響

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