好中球の機能と歯髄炎の関連性についての研究

概要

論文の詳細を見る
好中球は細菌の侵入に対して侵入部位に遊走し,集積して貪食を行い防御する.しかしながら,これらの好中球は脱顆粒によって組織破壊を引き起こす可能性をもっている.歯髄の炎症の病態論で好中球の役割は明らかになっていない.この役割を解明するために,われわれは正常ラットとメソトレキセートの投与によって誘発された好中球減少症ラットで,好中球の機能に対する顆粒球コロニー刺激因子(G-CSFと略す)の影響および,露髄後に引き起こされる歯髄の組織変化に対する影響を検索した.歯髄の炎症は下顎第一臼歯の歯髄を露出して惹起された.好中球減少症は,露髄前3日間メソトレキセートを投与して引き起こされた.また,G-CSFは露髄時から毎日投与された.露髄後7日で血液中の好中球数および好中球の遊走能と貪食能を調べた.さらに,歯髄および根尖部歯周組織の変化を,組織学的および細菌学的に観察した.何も投与されていないラットにG-CSFを投与したとき,好中球数は増加して遊走能は高まるが,貪食能と歯髄の炎症には何も変化はみられなかった.メソトレキセートによって惹起された好中球減少症のラットでは,好中球の遊走能と貪食能は抑制され,歯髄壊死の面積は拡大した.細菌の侵入は根管内の歯髄壊死部にまで達していた.好中球減少症のラットにG-CSFを投与したとき,好中球数は増加して遊走能と貪食能は回復し,壊死面積の拡大は抑制された.これらの結果,好中球は歯髄組織に侵入した細菌に対して防御的に働くことが示唆された.
特定非営利活動法人日本歯科保存学会の論文
2007-02-28

好中球の機能と歯髄炎の関連性についての研究

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク