淡水産甲殻類プランクトンの生態分布I : 日なたと日かげの分布
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概要
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1. 1968年春4月夏8月の2回,宮城県柴田町仙台大学構内の深さ40〜50cmの池で,甲殻類プランクンの日なたと日かげの分布を垂直分布とあわせて調査した。2. 採集地点として,5月には互いに約2.5m離して1方は日なたに他方は日かげにある2地点を選び,8月には約35m^2の区域中に,日なたの岸辺,日なたの池心側,日かげの岸辺,日かげの池心側の4地点を選んだ。3. 各地点において, 3連の小型プランクネットを用い,水平びきで表・中・底の3層の標本を同時に採集した。4. 池のこの区域に出現した甲殻類プランクトンは, Daphnia pulex, Moina rectirostris, Diaphanosoma brachyurum, Sinodiaptomus volkanoni. Thermocyclops hyalinus, Tropocyclops prasinusの6種とCyclopidaeのcopepodidおよびCopepadaのnaupliusである。これらのうちDaph. pulexは5月の標本中にのみ, Diaph. brachyurumは8月の標本中にみられた。5. 各種の日なた側と日かげ側の出現数を,出現率の信頼限界を用いて比較した。その結果,春夏のM. rectirostriおよび春のDaph. pulex, Tr. prasinus, copepodid, naupliusが日なた側に多く分布すること,夏のDiaph. brachyurum, Th. hyalinusおよびcopepodidが日かげ側に多く分布することが確かめられた。同様の方法で8月の標本について岸側と中心側の分布を比較すると,Moinaが岸寄りに, naupliusが岸から離れて多く分布することがわかった。6. 各地点各深さの各種の出現数が,出現率の比較および分散分析によって調べられ,とくに日なた日かげに関連して, M. rectirostris. Diaph. brachyurum, copepodid, naupliusの垂直分布が変ってくることがわかった。7. 各地点各深さにある甲殻類プランクトン群集の構成が,個体数および重量について調べられ,日なた側地点のほとんどの層にM. rectirostrisを優占種とする群集構成があるのに対して,日かげ側では中底層と移るに従ってS. volkanoniあるいはTh. hyalinusやDiaph. brachyurumの割合いが多くなり,それらが優占種となる構成に変ることが知られた。
- 仙台大学の論文
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