暁斎伊蘇普絵の詞の出典
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概要
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河鍋暁斎にはイソップ寓話を題材とした絵が数枚ある。イソップのひねった表現で教訓を与える手法は、暁斎の戯画の精神に合致したのであろう。この絵にはイソップの教訓物語を文字で教える簡潔な詞が付せられている。この詞はどこから取ってきたのか興味あるところであった。吉田漱氏はこの詞の翻刻を与えて我々に明治期のイソップ受容の貴重な資料を提供してくれたが、その出典については「錦絵中の戯文の執筆が誰かは明らかではない」として、直接の材源を突き止めることには成功しなかった。代わりに岩波文庫『イソップ寓話集』中の対応するものを指摘し、併記された。それはそれで立派な仕事になったが、岩波文庫のイソップの原典はアウグスターナ系のもので、暁斎のものとは相当に隔たっているものである。材源探しであれば、もっと近いものを検索すべきであった。その解答を求めることはそれ程困難ではない。というのは、暁斎は明治初期に編纂されたイソップ寓話集の挿絵を描いていたからである。それは渡部温による『通俗伊蘇普物語』の挿絵である。これはトマス・ジェイムズの英語ヴァージョンを直接の藍本としている。この渡部本と暁斎絵の詞を比較すれば、著しい近似に気付く筈である。暁斎は自分を含めた数人の絵師が挿絵を描いた渡部のイソップの文を借用したのであった。渡部の『通俗伊蘇普物語』は翻刻も巻三までしかなく、原本の閲覧もいたって容易というわけでもないので、以下に対応する物語の翻刻を呈示する。また暁斎絵の詞との近似を示すためにも、後者の翻刻をも対照させるかたちで与えておいた。
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