鷄卵孵化ノ化學的研究補遺 : 第二篇 諸種内分泌物質投與ニヨル,鷄卵孵化時ニ於ケル乳酸,あせとあるでひーど,あせとん體並ニ葡萄糖量ノ消長ニ就テ
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概要
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諸種内分泌物質ト新陳代謝トノ關係ハ極メテ密接ニシテ,生活機能營爲ニ及ボス影響ノ至大ナルハ,既ニ先進諸學者ノ立證セル所ナリ.然シ乍ラ未ダ全ク闡明セラレタリト言フヲ得ズ.特ニ鷄卵孵化時ニ於ケル含水炭素及ビ脂肪代謝上ニ於ケル之レガ研究業績ハ甚ダ少ク,就中之等中間産物トシテノ乳酸,あせとあるでひーど,あせとん體ニ及ボス内分泌物質ノ影響ニ關シテハ,余ハ未ダソノ文獻アルヲ知ラズ.余ハ第一篇ニ於ケルト同樣ナル方法ヲ以テ,諸種内分泌物質投與ニヨル鷄卵孵化時ニ於ケル乳酸,あせとあるでひーど,あせとん體並ニ葡萄糖量ヲ測定シ,以テ鷄卵孵化時ニ於ケル諸種内分泌物質ガ含水炭素及ビ脂肪代謝ニ及ボス影響ヲ研索セントセリ.之レ余ガ本實驗ニ着手セル所以ナリ.本實驗ニ於テ使用セル内分泌物質ハちらーぢん(武田),いんてれにん(武田),あどれなりん(鹽化あどれなりん,三共),いんしゆりん(とろんと),ひぼほりん(武田),あとにん(武田),すぺるまちん(武田),おゝほるみん(武田)ナリ.是等内分泌物質ハ鷄卵各1個ニ付キ0.3cm^3及ビ0.1cm^3ヲ注射シ,大量及ビ小量ノ二群ニ分チ,直ニ40℃孵卵器中ニテ人工孵化ヲ行ヒ,第5,第10,第15孵化日ニ於テ之ヲ實驗セルニ次ノ結果ヲ得タリ.之ヲ要約スレバ,次ノ如シ.1)孵化鷄卵ノ乳酸,あせとあるでひーど,あせとん體並ニ葡萄糖量ニ及ボス諸種内分泌物質ノ影響ヲ研索セリ.2)ちらーぢん大量投與ノ場合ニ於ケル乳酸量ハ第5孵化日ニ於テハ,對照實驗ノ場合ト同程度ノ増加ヲナセリ.然シ乍ラ増加セル乳酸ハ,孵化日數ノ増加ト共ニ減少スルモ對照ニ比シテ緩慢ナリ.あせとあるでひーど量ハ孵化ノ初期ニ著明ニ増加ス.而シテ増加セルあせとあるでひーどハ孵化中殆ド不變ニ留マル.あせとん體量ハ第5孵化日ニ166%上昇シ,其後孵化ノ進ムト共ニ益々増加ス.葡萄糖量ハ孵化ノ前半期ニ大部分消費セラル.即チ對照實驗ニ比較シテ増加セル乳酸ノ減少ノ緩慢ナルコト,あせとん體ノ増生セラルルコトハ著明ナル差異ナリ.3)ちらーぢん小量投與ノ場合ニハ,第5孵化日ニ於ケル乳酸ノ増量ハ大量投與ノ場合ニ於ケル約二分ノ一ニシテ,ソノ後更ニ増加セリ.あせとあるでひーど量ハ孵化中著明ナル變化ヲ呈セズ.然シ乍ラあせとん體ハ第5孵化日ニ於テ,著明ナル増加ヲ示セリ.ちらーぢん投與ニヨリあせとん體ノ増量ハ顯著ナリ.即チ甲状腺内分泌物質ハ,脂肪ノ分解ヲ促進スルモノト思考セラル.4)いんてれにん大量投與ノ場合ニハ,第5孵化日ノ乳酸量ハ著明ニ増加ジ,孵化日數ノ進ムル從ヒテ次第ニ減少セリ.而シテあせとあるでひーど量ハ,第5孵化日ニハ對照ニ比シ變化ナケレ共第10孵化日ニハ顯著ナル上昇ヲ來シ,平均値ノ増加率ハ實ニ700%ナリ.後期ニハヤヽ減少ス.あせとん體ノ増加ハ,孵化ノ初期ニハ著シキモ,後ニハ輕度ノ減少ヲ示ス.葡萄糖ハ第5孵化日ニ於テ既ニ62%分解セラル.5)いんてれにん小量投與ノ場合ニハ,大量ノ場合ニ於ケルト殆ド同樣ナルモ,平均値ノ増減率ハ小量ノ場合ニ輕度ナリ.即チいんてれにんハ,孵化ノ初期ニハ含水炭素ノ嫌氣性分解及ビ脂肪ノ分解ヲ促進シ,之ニ反シテ孵化ノ途中ニ於テハ,含水炭素ノ好氣性分解ヲ強盛ナラシムルモノノ如シ.6)あどれなりん大量投與ノ場合ニハ,乳酸量ハ第5孵化日ニ於テハ,對照ニ比シ殆ド同樣ナリ.増加セル乳酸ハ,孵化ノ經過中極メテ緩慢ナル減少ヲナセリ.而シテ第15孵化日ニ於テ尚新鮮受精卵ヨリ307%高シ.あせとあるでひーど量ハ後半期ニ益々増加ス.あせとん體量ハ孵化ノ初期ニ於テ甚シク上昇シ,ソノ増加率ハ平均436%ナリ.然シ後ニハ輕度ニ減少ス.葡萄糖ノ分解ハ,第5孵化日ニハ非常ニ僅少ナルモ,後ニハソノ分解強ク對照ト同樣ナリ.7)あどれなりん小量ノ場合ニハ,乳酸,あせとあるでひーど,あせとん體及ビ葡萄糖量ハ大量ノ場合ト殆ド同樣ナリ,然シ乍ラ數字的動揺ハ幾分異ナレリ.即チあどれなりんハソノ比較的大量ヲ鷄卵ニ投與スル時ハ乳酸生成並ニあせとん體生成ハ促進セラル.之ニ反シテ,糖分解ハ阻止セラルルモノナル可シ.8)いんしゆりん大量投與ノ場合ニハ,第5孵化日ニ於ケル乳酸ノ増加ハ,對照實驗ヨリモ幾分小ナリ.増加セル乳酸ハソレヨリ輕度ナル減少ヲナス.あせとあるでひーど量ハ孵化ノ後期ニ顯著ナル上昇ヲナス.9)いんしゆりん小量投與ノ場合ニハ,大量ノ場合ニ比シテ大差ナシ.然シ増加セル乳酸ノ減少ハ非常ニ迅速ニ經過シ,第15孵化日ニハ僅ニ39%トナレリ.即チいんしゆりんハ孵化後期ニ於テハ好氣性含水炭素分解ヲ促進セシム.ソノ際あせとん體ハいんしゆりん投與ニ拘ラズ,含水炭素缺乏ニヨリ不完全ニ酸化セラル.10)ひぽほりん投與ノ場合ニ於ケル乳酸量ハ對照ニ比シテ大差ナキモ,増加セル乳酸ノ減少ハ幾分緩慢ナリ.あせとあるでひーどハ後期ニ著シク増量スルモ,あせとん體ハ之ニ反シテ孵化ノ初期ニ著シク増加ス.ひぽほりんノ大量及ビ小量投與ノ間ニハ本質的差異ヲ認メ得ザリキ.ひぽほりんハ不完全ナル脂肪分解ヲ催進セシムルモノナラン.11)あとにん投與ニヨリテ,孵化初期ニ於ケル乳酸ハ對照ニ比シ,輕度ノ増加ヲナス.増加セル乳酸ハ第15孵化日ニ於テ突如トシテ減少ス.あせとあるでひーど量ハ,後ニハ多少増加スルモ,何等ノ意義ヲ有セズ.あせとん體量ハ既ニ第5孵化日ニ於テ著明ニ上昇ス.而シテ孵化經過中ハ殆ド不變ニ留マル.余ノ實驗ハあせとん體ノ増量ニ關シテ脂肪ハあせとん體ヲ經テ分解セラルト云フRaabノ所見ニ反對ノ事實ヲ示セルモノナリ.12)すぺるまちん及ビおゝほるみん投與ノ場合ニハ,あせとん體ノ増量以外ニ何等特別ノ變化ヲ認メ得ザリキ.即チ胚胎腺物質ハあせとん體ノ生成ヲ催進セシムルモノト云フヲ得ベシ.
- 京都府立医科大学の論文
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