管理状況の異なる雑木林におけるキノコ相の違い
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概要
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管理されている雑木林(管理林)と管理放棄された雑木林(非管理林)各1林分において,発生したキノコ相を比較し,その環境要因との関連について検討した。各林分において,発生したキノコ相調査および雑木林環境調査をおこなった。また,外生菌根性樹種であるコナラ(Quercus serrata)の活性菌根形成率を比較した。その結果,非管理林では管理林に比べ土壌含水比が高く,リター層が厚かった。キノコ相を比較すると,管理林では菌根菌11種,落葉分解菌5種,木材腐朽菌2種であったのに対し,非管理林では菌根菌2種,落葉分解菌5種,木材腐朽菌5種が確認された。管理林では落葉分解菌や木材腐朽菌のキノコは局在的であったのに対し,菌根菌のキノコは,菌根形成樹種の根系圏内で,明るさを示す光合成有効放射の相対値(rPAR)の高い場所で分散して発生していた。また,コナラの活性菌根形成率は,非管理林で26%であったのに対し,管理林では52%と高かった。このことから,有機物が蓄積し土壌水分も多い非管理林では,落葉分解菌や木材腐朽菌のキノコの発生しやすい環境であるのに対し,rPARが高く有機物の少ない管理林のような林床環境では菌根形成が頻繁で,菌根菌のキノコの発生しやすい環境である可能性が示唆された。
- 2004-06-25
著者
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