熱帯低湿地林とサゴヤシ林における元素動態

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熱帯低湿地林とサゴヤシ林生態系における元素のフラックスと,その伐採(収穫)後の変化を評価した。林外雨,林内雨,リターフォールに含まれる元素を定量し,系内へのインプットとして見積もった。一方,排水による系外への元素の流出をアウトプットとした。植物による元素の吸収は無作為抽出した樹木とサゴヤシの元素分析により評価した。林外雨,林内雨には顕著な差は見られなかった。サゴヤシ林に隣接した排水路中の水の元素濃度は湿地林からの浸出水よりわずかに高く,乾期に高濃度になる傾向が見られた。湿地林は先駆植物の多い二次林であり,そのために林床への落葉落枝による元素のインプットが大きく,特にカルシウムの大きなインプットが観測された。年間の元素の収支より,この湿地林は植物が吸収した元素を能率的に再利用していることが示された。サゴヤシ林では流去水による元素の損失がより大きく,収穫により系外への元素の流出が助長され,特にカリウム欠乏が発生することが予測された。しかしながら,サゴヤシ林の元素の損失は湿地林の元素の増加分によって,ほぼ補うことができる。したがって持続的なサゴヤシ栽培のためにはサゴヤシ林の周囲に湿地林を元素の貯蔵庫として残すなどの元素循環に基づいた管理が必要である。
森林立地学会の論文
1998-06-30

熱帯低湿地林とサゴヤシ林における元素動態

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