会計情報の有用性に関する一考察--財務諸表分析による戦略評価
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概要
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トヨタ自動車株式会社は、2004年3月期決算において連結当期純利益がはじめて1兆円を超え、その後、円高や原材料価格および原油価格の高騰、米国経済の減速等厳しい経済環境のなか順調に増大させ、2008年3月期には1兆7,200億円へと10年間で約5倍へと経営業績を改善させてきた。本稿では、トヨタの成長の原動力となった経営・財務戦略とはどのようなものであったのか、これらの戦略がどのような結果をうんだのか、日産自動車株式会社を比較検討として取り上げ、公表されている1999年から2008年3月期までの10年間の財務諸表データを分析、検討することによって検証することを試みている。 本稿では、トヨタの成長の原動力となったのは、トヨタの積極的な財務戦略の成果であること、すなわちトヨタには、好調な本業業績に支えられた利益の蓄積により潤沢な資金が蓄えられ、その信用度の高さゆえに低く抑えられている資本コストを利用した積極的な財務戦略の成果であることを検証した。 積極的な財務戦略の一環として、金融事業、金融資産への投資を増加させてきたが、この戦略は結果的に収益性を低下させることになった。しかし、本稿ではトヨタの積極的な財務戦略が、自己資本による資金調達を減少させ、借入による資金調達を増加させることによる財務レバレッジを活用し、資本コストを上回る収益率を確保することにより利益額を増加させ、さらなる資金蓄積を生み企業価値の増加に貢献したことを財務諸表データの分析から明らかにした。
著者
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