環境報告書におけるCSRコミュニケーションに関する考察 : 学生の評価からみたCSR報告書の有効性について
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概要
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環境報告書は,環境に対する取り組みや自社の活動による環境影響などについて,企業がステークホルダーに伝達するコミュニケーション・ツールのひとつである。近年,環境報告書を発行する企業の数が増加する一方,環境報告書に企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility:CSR)の側面を盛り込み,有効なマーケティングを実現する企業も出現している。そこで本研究では,コミュニケーション・ツールとしてのCSR報告書について,企業が期待する機能と読み手としてのステークホルダーの関係を整理したうえで,報告書の意図する情報が,どの程度読者に伝わり,評価されているか調べるためのアンケート調査を実施した。ステークホルダー分類を基に【経済的側面】【社会的側面】【環境的側面】に関する記述の有無と,読者(大学生)の評価の関係に関する推計を行った結果,社会的側面については5%水準で有意(係数は正)であることから,社会的側面についての記述が詳細になれば,環境報告書の読み手が企業に対して下す評価は高くなることが示された。しかし,経済的側面,環境的側面に関しては,統計的に有意な結果は得られなかった。すなわち,大阪産業大学および龍谷大学の本調査回答学生は,環境報告書を読む際に社会的側面の記述に対して高い評価を与えており,CSR報告書のコミュニケーションの有効性が確認された。しかし,その他の側面の記述については,企業の評価を下す際に必ずしも参考にしているとはいえないことが推測される。この結果は,学生が企業のもつ環境責任と直接の購買行動を分けて考えている可能性を示すとともに,自分たちに直接関係のある社会的な取り組み姿勢を,より重視しているという可能性を示唆するものである。
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